Ⅲ時限目(13)
(良く特徴を捉えているわね)
裂かれた綿あめの向こうでは、鶯谷がレモンのバリアにつかまり立ちしていた。
「坊ちゃんは、クロエ様の元へ行かれました……」
ジゲンⅣのスクエイアは、傷ついた相手を忌々しそうに眺めやった。
(あなたを信じて、暗君を落ち延びさせたのかしら。あの人は、いつも他人を優先させるわ)
「まるで、前々からご存知のように仰いますね」
(私の方が、あの人と過ごした時間が長いのよ)
着地したジゲンⅣのスクエイアは、バリアを蹴った。
(ウグイスダニマコトをスクエイアとは無縁にさせて)
「本当の名前は、アドミニスさんだね」
下がろうとした少女の腕を、鶯谷はしっかり捕らえた。
(小さい子ではなかったの……!?)
「運任せだった」
こめかみを指で押さえながら、彼が答える。
「煙幕に紛れても、看破される心配があったんだ。そうなる前に、マホーをかけてもらったのさ。ロロになれるマホーをね。君はなるべく早くスクエイアを排除したいから、乗ってくれることに賭けた」
(私が、小さい子に変身したあなたを追っていたら?)
「アドミニスさん、と呼び止めるよ。無謀かもしれないけれどもね。頭痛が『鍵を持つ人』の記憶を流している。君の目的は、私だった」
アドミニスは、うずくまった。
「私に、スクエイアの役目を果たさないように、陰で動いていたんだね。昔、蒼い薔薇として、私を助けてくれたのも、普通に人生を送ってもらうためだったのかな?」
自身の肩を抱いて、アドミニスは短く返事するのだった。




