Ⅲ時限目(10)
午前の得点順位は、四位が一組、三位が二組、三組と四組は同点の一位だった。
「優勝せえよ。なんたって、燦然と輝く三組やからな!」
田端先生も好調だ。ご担当の二年三組は、負けず嫌いが多い。四組を抜かすことは不可能ではないだろう。
「クロエ先生は、腹、大丈夫か? あんまり刺激ないもん食べとけ」
目黒先生は、肩を激しく叩かれてうずくまっていた。
「……適当につまんでいるかの」
まだ、患部をさすっている。急遽、一時間の休暇を取って出勤されたが、本当に単なる腹痛なのか?
「ちょっと、教室に顔出してくるで」
良いタイミングに、田端先生が席を外された。私は目黒先生の隣に移った。
「次はリレーじゃろ。わし達の三倍食べておかねばのう」
「先生、今朝何があったか、話してくださいませんか」
小人達におにぎりやおかずを盛ってあげていたロロが、こちらへ膝を向けた。
「ジゲンⅣのスクエイアに、切られたのじゃ」
目黒先生がジャージをめくった。包帯が脇腹の辺りで黒く染まっていた。
「急いでお手当ていたします!」
ロロが円を作った両手を傷に翳した。
「ヤモシタノ・マノエイヲカ」
黄色い光を注がれて、目黒先生の息遣いが穏やかになっていった。
「痛くないぞよ。見事な治療マホーじゃ」
「恐れ入ります」
目黒先生の肩に、四人の小人がよじ登っている。
「皆様、唐揚げを召し上がったばかりでございますよね。手を拭かれましたか?」
軽快な「はーい」が聞こえない。
「べたべたのままなのですね? いけませんよ」
「構わぬ。存分に遊ばせてやるのじゃ」
目黒先生が、腕や足をすべり台の代わりにさせた。
『わーい、クロエ先生だいすき!』
「お行儀が悪いですよ!」
ロロはおしぼりを持って、小人達を拭いていった。
「ジゲンⅡのスクエイアよ」
「はい」
「若造に付いておるのじゃぞ。蒼き薔薇の乙女はスクエイアの首を狙っておる」
「かしこまりました……」
ロロは切なそうに答えた。
「スクエイア同士で争いたくありません」
私は両方の拳に、力を入れた。
「彼女なりの考えがあるんだ。けれど、私がいるからには、君達を傷つけ合わせない」




