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Ⅲ時限目(4)
用を足す名目で、外の空気を吸いに行った。
「ホッパー真……散々なでまかせだ」
不屈の鶯谷、ぐらいなら忘年会のギャグに使っても良かったが。
「奥さんが離婚を考えなかったのが、不思議だなあ」
田端夫妻と私の両親は、同じ中学だった。田端先生と親父が野球部に、奥さんと母がソフトボール部に入っていた。私の両親が結婚して、それぞれの後輩である先生と奥さんが祝いに馳せ参じた際、一目惚れしたそうだ。
上から視線を感じる。仰ぎ見ると、跡見さんが窓辺に直立していた。
「ミーティングは終わったのか」
首を横に振らないため「はい」と解釈する。
「今年も文集、読ませてもらうよ」
跡見さんは、繊細な物語を紡いでいる。ハッピーエンドではない恋だが、哀れみを誘わず、すっきりした結び方だ。それがかえって面白い。
「あまり根を詰めないようにな」
瞼を閉じて、跡見さんは窓を離れた。緑の石に用心するように、を言いそびれてしまった。
跡見さんのジゲンも、スクエイアが守ってくれるよ。君は、心置きなく勉強していられるんだ。




