Ⅱ時限目(18)
「約束についてなのじゃが」
目黒先生が分身を呼び、黒い直方体を持ってこさせた。
「黒瑪瑙を手に取るのは、実に百年ぶりじゃのう」
ロロは息を呑んだ。
「まさか、ジゲンⅠのスクエイアは……!」
「聡いのう。大当たりじゃ。わしがジゲンⅠの王にしてスクエイアの、クロエじゃ!」
クロエは存分にのけぞった。私の目は、頭部に黒瑪瑙を乗せているように認識しているが、彼にとっては掲げているのであった。
「スピーチまで明かさぬようにしておったが、そなた達にまた誤解されてはつらくての」
ロロは茣蓙に両膝を付いて、頭を下げた。
「クロエ様、改めてお願い申し上げます。わたくしめと、ジゲンゲートの暴走を止めてくださいませ」
「無論じゃ。わしは一国の主、滅亡の危機にも勝つ。あと二人のスクエイアにも呼びかけようぞ」
クロエが黒瑪瑙を差し出し、ロロにスクエイアの証をこちらへ、と促した。ロロは首のリボンを解き、ぶら下がっていた黄玉を重ねた。
「さらに緑柱石と蒼玉が加われば、ゲートへの道が開かれるぞよ」
「ジゲンを守りましょう!」
婚礼の主役と参列者が、喝采する。
「ジゲンを究める者」
ひれ伏そうか悩んだが、クロエは細かいことにこだわらなかった。これまで通りに接してみよう。
「そなたの男前な行い、胸に響いたのじゃ」
多数の分身が鉦を叩く。
「小姓にしてやろうかの。おっと、ジョークじゃ」
会場に歓声の大波が起こった。




