Ⅱ時限目(15)
キャンプファイヤーは、平穏に済ませられた。各クラスによる流行歌の斉唱はさることながら、学年主任と担任のダンスもなかなかの出来だった。田端先生は、気分が乗る時だけ練習に参加していたようだが、テンポがずれることなく踊れていた。本番に強い人なのである。
二十三時五十二分、待ち合わせ場所に到る。宿泊棟と連結していたので、外を走らずに済んだ。
「もういいよ、お疲れ様」
ボールペンを海球儀の前に放る。フロアが、レモンイエローの光に満たされた。
「十二時間を超えた変身は、初めてにございます」
光が消えると、ロロが海球儀に手を付いていた。
「歩けるか?」
「はい」
チョコレートカラーのスカートをひらめかせて、小鳥のように私の元へ来た。
「先に待っておったか。偉いのう」
目黒先生が、適当な拍手をしながら現れた。
「婚儀は、新婦の家じゃ」
右の壁を指し、私達を招いた。水彩画が、貝殻を散りばめた額縁に入っていた。童話に登場しそうな人魚が描かれている。
「ヒオ様ではございませんか……!」
ロロが絵に寄った。
「お友達?」
「恩人でございますね。ジゲンⅡの暮らし方を教えてくださるなど、たいへんお世話になったのです」
目黒先生は私達にうなずいた。
「ジゲンⅡのヒオ殿と、ジゲンⅠの新米近衛兵が結ばれるのじゃ。そなたはもってこいの客ぞよ」
人魚の絵が一面レモンイエローに変わり、私達をその奥へ導いた。
「しばし羽を伸ばすと良い。こちらの一分は、あちらの一時間じゃ」
跡見さんの手裏剣と、田端先生の折り畳み傘に念じる。ひたすらめでたい席であれ。




