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色々な話は帰ってからレベッカさんとすることになり、そのままいつもの感覚で丘へ行こうとしたわけですが、入り口の所が何やら少し騒がしくなっていて。
最近は外からこの村に応援というか依頼を受けてくれるハンターも来ているのでまた何かそのハンター達が騒ぎを起こしているのかと思ったのであまり近寄らないようにそっと静かに入り口を過ぎようとしたのですが、ウェージさんがこちらを見つける手を振って大きな声で呼んできます。
これからいつもの道を歩いて行くのであまり寄り道はしたいと思っていたのですが、呼ばれた以上向かわない訳にも行かず。
呼んでいたウェージさんの方へ行くと、ちょっとした体当たりぐらいの勢いが自分の胸の辺りへあって、その後は何度もやられているので記憶にあるすりすりとした動きをアウェクルが腹のあたりにしてきます。
「このアウェクルっていつも乗せてくれているアウェクルですよね?どうしたんです?」
「昨日こいつに乗って丘へ行っただろ?それでお前さんのモノになったと思ったみたいで、今日も一緒に丘へ行きたいらしい」
「丘へ?ですか?」
「ああ。ただ、こいつは一応ギルド所属で個人所有ではないから使うとなれば金はかかるんだが、そういう余計な金は……ないだろ?」
「ええ、ないですね。さらに言えば撫子だって餌代みたいなものが無い状態になっていますから、アウェクルの維持費なんて無理でしょうね」
「だよな」
この世の殆どのモノはお金で一応解決できるわけですが、その先立つものが無い状態でこっちの世界に来たわけで。
さらに言えばいい稼ぎがあるわけでもないので、こういったことも自分で上手く対処できない話にもなって。
「とりあえず、今日は連れて行ってやることは出来るか?」
「それは構いませんけど……あんまりいい事じゃないですよね?」
「まあな。でも、変にこいつが脱走しておっさんを追いかけたりしてこっちの仕事が滞るのも困るわけでな?」
「それを言われてしまうと何ともですね」
「とりあえず、少しでいいから待てるか?今日だけととりあえず報告してくるから」
「分かりました」
ウェージさんは頼むとだけ言って、とりあえずギルドに報告へいくのですが頭の上の撫子が肩を伝ってアウェクルに目を合わせます。
そして、目を合わせたまま首をゆらゆら。
それに合わせてアウェクルも首をゆらゆら。
何を二人がしているのか分かっていない状態ですが、撫子が一度アウェクルの頬のあたりをすりすりとして、同じようにそれを返すアウェクルがあって、そのまま頭の上に撫子が戻ります。
正直それが何だったのかは分からないのですが、それが終わったらお腹のあたりにすりすりする動きは終わって、一度大きく鳴くと今度は自分を乗せるときの様に屈んできます。
「乗れって事?」
すりすり
返事は撫子がする形で、どうやら乗せたかったみたいでアウェクルが早く早くと急かしてくるのですが、乗ったら乗ったでこちらの言うことを聞かずに丘まで勢いよく走りそうな感じがあって。
少しためらっていたのですが、ウェージさんはレベッカさんに報告が終わったみたいで、苦笑いをしながら戻ってきます。
「今日はとりあえず乗ってやってくれ。で、帰ってからその辺りも話そうって事になった」
「わかりました。じゃあ、乗せて貰ってきますね」
「おう。行ってらっしゃい」
会話が終わったら、アウェクルに早速乗る事に。
乗ってしまえば、いつもの事という感じで結構重いと思うのですが、そう言ったことを気にする様子はなく、数回跳ねてから位置を合わせたみたいで、最初はゆっくりなスピードで動き始めます。
「一緒に丘へ行っていいってさ。ただ、あんまり迷惑かけちゃだめだよ?」
分かっているのかいないのか、鳴き声で返事をして昨日と同じいつものルートを結構な速さで駆けてくれて、普段の歩いている時の優しい風とは違う風を切るような速さでもって、丘へと向かうのですがコレはコレでまた気持ちのいいモノで。
昨日と一緒で出発時刻はいつもより遅いのに、早い時間に丘に着くのでちょっといつもより早い時間からのキノコと薬草採取なわけですが、相変わらずキノコはウチの撫子が食べてしまうので、持ち帰るのは薬草ばかり。
昨日と一緒でアウェクルをキャンプ地に置いての採取なのでキャンプにいるアウェクルの事が多少気にはなるわけですが、いつもの作業は思っているよりもサクサクと終わり、一度休憩でキャンプ地に戻ったのですが、何やらアウェクルはいつもよりそわそわしている感じ。
「なにかあった?」
相手はアウェクルなので返事があるわけじゃないのですが、どうかしたのかと聞いてみると、ペチペチと撫子が返事?をしてくれます。
「えーっと、否定だと何もなかったって事?」
すりすり
「じゃあ、問題なし?」
ペチペチ
「そういうわけじゃないのね」
すりすり
撫子を介しての会話なのでイマイチ話が分かりづらいままなのですが、何か伝えたいことがあるみたいなことだけは分かったので、折角の休憩ついでにしっかりと話を聞いてみるとしましょう。




