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 止まない雨はない、明けない夜もない。

 誰が言ったか、自分も聞き覚えのある言葉がふと頭に浮かんだのですが、


「歩いても、歩いても、何もないと流石にキツイ」


 足の痛みが歩いてきたことが嘘ではない事を知らしめて、体の怠さが疲れを示す以上今までの工程に嘘はないハズなのですが、この森に終わりがないと思えないような気もしてくるもので。


「でも、足を止めたら動く気もしない」


 正直な話自分が今、多少オカシク(・・・・)なってきている気はするのですが、それを認めるというのが怖くてそのまま足を進めているのですが、流石にそろそろ認めないといけない気もしていて。

 ただ、それを認めたら何か元に戻れないような気もしていて。


 言葉に出すのは怖いのでその言葉を心の奥にしまって、それだけだとやっぱり辛いので心の中で必死に大丈夫、大丈夫と発破をかけながら歩いているのですが、森に変化は何もありません。


 そして不思議な事に、大丈夫と心の中で言い続けた結果なんとなく大丈夫な気がしてきます。


 今度こそ本当に自分がオカシク(・・・・)なってしまったような気がするのですが、それもほんの一瞬だけ。


「そろそろ変化もあるんじゃないか?」


 何故か(・・・)凄く楽天的に、そう思えたのですが、本当にそれは現実になる事に。



 木々が鬱蒼としている場所にやっと光が差し込みます。

 そこまで光に飢えていたわけではないのですが、その眩しさに思わず目を細めてしまいますが、目の前には待ち望んでいた森の終わり。さらにその先に見えるのは、


「やっと、街があった」


 遠目に見えるのは街というよりは村という感じですが、遠目でも人がパラパラといる事が分かるのでそれだけでも十分嬉しい状態で、足の痛みを忘れて思わず駆けだします。

 ただ、思っている以上に疲れもあったみたいで足がもつれて転ぶことになったのですが、それでも痛みを感じることは無く、すぐに立ち上がって急いで街に向かいます。



「おや、アンタは?」

「そこの森を抜けてきたのですが、街に入れてもらえませんかね?」


 考えてみるとこっちの世界に来てから初めて人と話すのですが、


「それはまた、大変だっただろうに。街というよりは村だが、ゆっくりしていきな」


 笑顔で村に入れて貰えて大助かりなのですが、


「あの、見てわかる通り着の身着のままなので何も持っていないんですよ。ココでどうにか生きていくことって出来ますかね?」


 今の自分に価値がない事は分かっているのですが、死にたいわけではないのでまずは水、出来れば食料を確保したいのですが、その為の路銀もない状態。

 普通に考えて街ならまだしも村に仕事があふれているとは思えないのですが、それでも生きるために何かやれることが無いかを聞いてみると、


「そうか、そうか。じゃあ、とりあえずこの道を真っすぐ行くとここと同じような門がある。それの少し手前の左側の建物、えーっと、あの赤い屋根の建物に行ってみてくれ」

「あそこにある赤い屋根の建物ですか?」

「ああ。レベッカが居るから、仕事が欲しいと言えばいい」

「レベッカ?」

「悪い奴じゃない。大丈夫だ」


 そういって背中をバシンバシンと結構な強さで叩かれたのですが、勢いが強かったのでそのまま歩きだすことに。

 どうやら自分の今歩いている道はこの村のメインストリートみたいで、左右にお店があって、雑貨屋と武器?を売っている店、あとは個人宅?と食事が出来る場所もあるみたいで何とかなる可能性が少し高くなったような気はするのですが、どう見ても宿屋のような施設は見かけることなく赤い屋根の建物に到着。

 結局ここがどういう場所なのかは分かっていませんが、とりあえず仕事をくれるという門番さんの言葉を信じて扉に手をかけて開けてみる事に。


「レベッカさんという人に仕事が欲しいと伺ったんですけどー」


 扉はあいていて、そのまま開ける事が出来たので中に入ると、なんとなく見た事のあるようなない様な場所。

 自分の要望も伝えながら開けたので中にいるレベッカさんと話が出来ればいいと思ったのですが、扉を開けた先に居たのは結構若い男女のカップルのような人達。

 その人達がこちらを怪しむような感じに見てきますが、今の自分には何もできることは無いので軽く両手を上げて抵抗をしないという意思を表示したまま動かないでいると、


「呼ばれた気がするー?」


 元気な声がカウンターの奥から聞こえてきて、


「おぉ?なになにー?新しい人ー?珍しいねぇ?」


 そう言いながら、こちらの全身をくまなく見て……何故か止まります。


「あ、あのぉ?門番の人にここにきてレベッカさんという人に仕事が欲しいと言えばいいと言われたのですが」

「うんうん。わかったよー。とりあえずハンターになるって事でしょ?」

「え?」

「ん?違うの?」

「あ、いえ、多分そうです?」

「あー、門番って事はウェージかな?説明しないで寄越したなー?まぁ、いいや。お仕事欲しいんでしょ?ここはハンターギルドで、お仕事を斡旋するんだけど、おけ?」

「お、おけです」


 何か良く分からないうちに自分はどうやらハンターになれるみたいなのですが、ハンターで思い出すのは勿論ゲームのアレ。モンスターをハンターするアレはポータブルでもかなりやり込んだので自分としてもやれる気はするのですが、あのステータスで大丈夫かと言われると正直微妙な気もしていて。


「見た目通りで更に体力や魔力も少ないですけど、大丈夫ですかね?」

「あー、まじかー?でもまあハンターは常に人を募集中だからー、いいんじゃない?」

「ですか?」

「ですよ?」


 そんな軽いノリでいいのかと思いながらも、どうやらその軽いノリでいいみたいであれよあれよという間にこっちの世界でハンターになる事になりました。





明日に続きます

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