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 唯一の幸いは今までどっちから来て、これからどっちへ行けばいいのかという方向が分かる事。

 正直日の光も余り差し込まないこの鬱蒼とした森の中でどっちが北なのかは正直分かりません。


「というか、北がどっちか分かっても街がそっちにあるとは限らないんだよな」


 目が覚めた時の街に戻るぐらいであれば別の街に行きたいので方向は馬車が向かったであろう目の前の方向なのですが、


「思っているよりわだちが薄いな……」


 普通に考えれば貿易か何かであの街にあの馬車が来ていたはずですが、轍は薄くあまりこの道も使われていない感じがあります。

 そうなって来るとこの先に街や人が居るとは限らないのですが、今頼れるのはこの轍だけ。


「進むしかないな」


 魔法も使えない事が分かっているので、あとは自分の体力との勝負。

 やるだけのことはやってやるという気持ちでもって歩き始めるのですが、覚えているでしょうか?自分の体型を。

 別に早足でサクサクと歩いているわけではないのですが、お腹が出ているという事は今までの人生でもそこまで体力を消費することを得意としていたわけではないわけで。

 五分、十分は余裕で進み、三十分、一時間までは調子がよかったのですが、二時間を超えたあたりで足に痛みが。

 裸足ではないものの、自分の靴でもなく慣れない歩きをしているというのもあって結構疲れもあるのでどうしたものかと考えたのですが、ハッと一つ気がつきます。


「そうだ、ステータスオープン!!」


 確か体力の項目があったはずと思って、ステータスを確認してみるのですが、



 (名称未設定) 男 1/1

  体力   100

  魔力   10

  ――

  ――          



「表示に変化無しかいっ!」


 突っ込みを自分で入れる事に。

 自分の予想としては体力の数値が減っていてコレがもしゼロになったらヤバいのかもしれないというある意味ギリギリを計れるものかと思っていたのですが、変化はどうやらない模様。


「魔法も使えない、体力の消費も不明。って事は何も分からないままか」


 一応最初の頃に比べるとかなり遅くなったペースで歩きながら今の行動をしたのですが、結局分かる事は何一つなく。

 さらに言えばさっき予想したような何かしらのイベントも起きる気配は全くないまま。


「死にたいわけじゃないが、何かしら出てくれた方がまだ助かるのに」


 森の中で会えそうなものだと、喋るキノコとか?いや、魔法がある世界だったら妖精とか精霊なんていうのもアリな気がしますが、この魔力と体力だとそういうものと会えるのかどうかと考えると微妙な結果しか想像できず。

 ぶつぶつと独り言を言っていても、勿論返事はないので独り言はどんどん大きくなっていくことに。


「このまま歩き続けて、何も会わなかったら野垂れ死ぬわけだろ?……まあ、それはそれで仕方いないかもしれないが、まさかこんな終わりがあるとは」


 と、自分の死が明確に近づいていることを理解するのですが、何故かいつもとは違い(・・・・・・・)そこまで暗い感じにならず。


「こんなことになるんだったらもっと色々とサバイバル技術を学んでおくべきだったか」


 ロープの結び方とか、食べられる野草についてとか、こういう時にどうしたらいいのかをもっと知っておくべきかと思ったのですが、


「まあ、分かったところで何もないか」


 諦めも多少あったのですが、今できる事は歩く事だけ。進んだ先に何かがあれば助かることはありそうですが、


「いや、そうか。なるほど?」


 大きくなる独り言に自分で自分が一つ納得することがあって。


「死にたくないのか。俺は」


 こっちに来てからの自分の行動は自分でもあまり理解できていなかったのですが、あの街の死んだ目の人達と一緒に居ても生きられる感じがなく、少しでも死なない確率が高そうな馬車に乗り、食べ物を探すも見つけられることは無く、生理現象に悩まされながらも結局我慢が出来ずに水を飲むに至り、そしてその後はいわずもがな。

 あの場所に助けが来ない事を頭の片隅で理解していた為、少しでも確率の高い生きられる方法を探しながらも歩くに至ったわけで。


「こんな性格だったっけ?俺って?まあ、足が痛いのは生きている証拠で、腹も減るし喉も乾くが、手持ちは何もなし。進むしかないか」


 あれから二時間以上歩いているのですが水場も無ければ木々が緩く光が差すような場所も無く。ただ、湿気もあまり感じないので普通の森だとは思わない方がいいみたいで、こんな所だけ異世界を実感させられるとはなかなか難儀な状態。


 結局さらにそこから二時間ほど歩いていると、足がさらに痛くなってちょっと動くのが辛くなります。


「休憩もいいけど、水も食料もないからなぁ」


 このまま先に進むのはきつそうなので少し休むつもりはあるのですが、それと同じぐらい休んだら動けなくなりそうな気もしていて。


「ちょっと休む、いや、このまま進むべきか?」


 休んだところでただの休憩。水も食料もないので回復するものは自分の気力ぐらい。

 そうなって来ると休むことにあまり意味がない事に気がついたので、


「休んでも仕方ない、進もう」


 このまま歩みを進める事にします。






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