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撫子が新しく薄く光るものを食べるようになってから早いモノですぐにもう三日。
そして繰り返す毎日に大きな変化はないままで、少しずつ慣れが出てくると新しい楽しみや喜びというのは減っていくもの。
そんな感じの毎日を繰り返していく中で、週に一回のロボットの観察はかなり楽しみなわけで、前日である今日レベッカさんに色々と確認をしたかったのでいつもはすぐに終わる夕食の後に少しだけ時間を作ってもらう事に。
「で、話があるんでしょ?」
「ええ」
食後というのもあって全体的に空気はかなり穏やかな感じですが、ここから先の話はあまり大っぴらにしたい話ではなかったのでどうするのがいいか確認すると、レベッカさんが一番いい方法を思いついたと言って、とある提案をしてきたのですがその内容はちょっと自分では流石にマズイと思えるもので。
「本気ですか?」
「本気よ?」
「間違って何か……変な事があっても知りませんよ?」
「間違ってって、ありえないでしょ?」
「いや、まあそうですけど……ほら、万が一の心配とかないんです?」
「うーん、それはまあ言いたいことは分かるんだけど……私の方が強いでしょ?」
と、言われてしまってその言葉を否定する材料が自分には一切ないのでコレ以上言える言葉は無く。
「じゃ、あなたの部屋に行きましょう」
レベッカさんは安全に話が出来る場所として選んだのは自分の部屋で、男の部屋に一人で来るなんて……と一応心配をしたのですが、こっちの世界に来てから一月も経っていないのでお腹のタプタプに変化はなく、さらに言えば毎日頑張っている腕立てや腹筋の成果も何か感じられるほどのものもなく総合的に考えれば自分の方が弱い事に違いはない為本人がいいと言うなら自分の部屋と決まってしまいます。
「それに、おじさんがもし何かおいたをしようとしても撫子ちゃんもいるから、大丈夫でしょ?」
「まあ、撫子は強いうえに賢いですしね」
「ここ数日はお話していなかったし、あの肌触りいいのよねぇ」
レベッカさんが自分の部屋に来たかった本当の理由はどうやら話よりも撫子だった気がするのですが、とにかく自分の部屋に女性が来るというあまりにも機会のないイベントに少しだけ良く分からない期待などが湧く気がしたのですが、ふたを開けてみると大したことは無く。
普通にレベッカさんは椅子に座って、撫子を両手で持ち上げて、体の前でゆっくりと楽しんでいるみたいで、その動きも撫子的には楽しいみたいで、二人で楽しそうな感じの空気に。
このままだと何を離そうとしていたのか忘れてしまいそうなので、さっさと許可を取ってしまおうという事で、早速本題をレベッカさんに。
「明日の遺跡探索ですが、この間と一緒で少し遅い時間に帰る事って大丈夫ですか?」
「それについては多分問題ないわよ?ただ、前回みたいに毎回毎回何か発見があるとは思えないんだけど、それでもロボット?の探索だっけ?したい訳?」
「探索がしたいというよりはロボットを動ける状態にしたいんです。だから、まずは人間でいう心臓であるコアみたいな場所がありそうなところまで梯子をかけたり、その為の地面を固める作業をしたり、やれることを色々としてみたいんですけど、その許可を欲しいって感じですね」
「別にあの遺跡、私の持ち物ってわけでもないからそんな許可は取らなくても大丈夫よ?」
「でも、この間もそうでしたけどあまり遅い時間に戻ってくるような長時間作業はしない方がいいんですよね?」
「それはまあ、そうね。そもそも個人依頼だからどこまでやらせていいとか悪いって言うのは私個人で決めればいい訳だけど、まだ見てもいないものをどうのこうのしたいと言われても私としても許可をだしていいのかも良く分からないのよね?」
レベッカさん的にダメとは言わないけどあまり遅くなるのはよくないと言っている感じだったのですが、何やら少し違うとも思えたのはレベッカさんの表情が少しだけいつもと違う感じがあって。
「なんだかんだと言ってもね、ここは村社会なのよ。都会と違って隣の家の人のことが分からなくても大丈夫ではなく、何でも知っているって言ってもいい様な……そういう空気ってあるじゃない?そうなったとき、大変なのよ……」
レベッカさんの顔は本当に大変だったと言わんばかりの面倒事はもうこりごりという感じの表情でもあって。
「村社会については分かっていませんでした。依頼をしたレベッカさんもあまり遅い時間まで仕事をさせていると色々と言われるって事ですね?」
「簡単に言うとそういう事よ。まあ、別に私は何を言われても気にしないからいいんだけど、住むってそういう事をまったく気にしないでは生きていけないでしょ?」
「何となく、わかります」
何となく言わんとしていることが分かってしまうと、あまり自分の都合で無茶な事は言えないと理解したのですが、それでもロボット探索は出来るだけしたい所。
「じゃあ、二時間程遅くなるって感じでどうです?」
「私はいいけど、二時間も遅くなると理由は?」
「この通り自分は体力が無いので、さらに時間が掛かるようになったという感じでどうです?」
「別にそれでいいなら構わないけど、更に勝手な事を言う人が増えるわよ?」
「それも別に気にしていませんから」
実際にこの村で話す人なんて、門番をしてくれているヒックスさんにウェージさん、そして今も話しているレベッカさんと料理を作ってくれることもあるカップルの二人ぐらい。
正直他の人とは挨拶をする程度でそれ以上でもそれ以下でもないのでその人たちに何かを言われてもそこまで何かという事もなく。
「じゃあ、二時間ぐらい遅くなるって事でいいですかね?」
「いいならいいわ。その代わり、あんまり心配をさせないようにしてね?」
「それについては頑張ります」
自分達の会話の内容をしっかりと理解しているみたいで最後は撫子がいつも自分にするようなすりすりをレベッカさんの顔に。
すると、そのすりすりは少しだけヒンヤリとしながらもかなりいい感触。
「撫子ちゃん……最高よー」
……撫子が最初からこの話をしていたら、もっと何も言われなかったかもしれないと思うのですが、撫子はヘビなので喋ってはくれず。
ままならないなーと思う夜になりました。




