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「えぇ?そのヘビさん力強いの?」
「……まぁ、おっさんよりは力があってもおかしくないが、その報告は悲しくないのか?」
「ヘビより……弱い?」
「今日の酒の肴か?」
「ぷぷー」
誰が誰だか何となく分かりますかね?
たまーにカップルの二人が狩りに出る事があるのですが、村を今日出ていたのは自分だけだったみたいで、帰って来るといつものメンバーがいつも通りギルドに居る状態。
なので、先程のキャンプの廃材を簡単にヘビが動かした話をしたのですが、ある意味予想通りの反応がしっかりと返って来ることに。
「はー、お腹痛い。で、力が強いんだっけ?」
「みたいです」
一番笑っていたレベッカさんが内容に間違いない?という感じで聞いてきたので、頷きを返したのですが、このヘビは見た目通りの大きさで、今の所自分としてはキノコをひたすら食べてしまう正直厄介としか言えないペットのような奴なのですが、毎日やっている腹筋と腕立て伏せによる自分の成長を待つより早い結果が出そうなことに。
「じゃ、ちょっと試してみよう」
ヘビを肩に乗せたままギルドの裏の方へ行くと、そこにはこの間持ち出した武器や盾が置いてある場所で、持ち上げるのがかなりきつかった記憶が蘇るのですが、レベッカさんは普通に持っていましたし、それらをアウェクルが背負っていたことも覚えているのですが、ヘビにこれをどうさせようかと思っているのかと思うと、レベッカさんはおもむろに一つの盾を持ち上げます。
「じゃ、そこにヘビを置いてもらっていい?っていうか、意思疎通はある程度出来るようになってきている?」
「あー、一応言葉は理解してくれているみたいですが、キノコを今日も納品出来ない事を勘案してもらえれば、その位の感じというのが分かってもらえるかと」
「まあ、それなら大丈夫でしょ?って事で、力を示してもらってもいいかな?えーっと、ヘビさん?」
何をすればいいのかを即座に理解できているみたいで、ヘビさんは肩から降りると首を一度傾げるのですが、そのあとは何をすればいいのかある程度理解している様子で、首を下げて背中を大きく見せるような形に。
「じゃ、いくよー」
レベッカさんは持ち上げていた盾をそのまま勢いこそつけずにヘビの背中に下ろします。
一瞬だけ盾は沈んだのですが、そのままの位置を盾はキープして盾を背中に乗せた状態になったヘビは何も言わずにそのまま耐えます。
「おー。この時点で強いねー」
「ですよね」
「じゃ、次は押して、引いてが出来るかだね。……はい、重たかったねー。君もまた不思議な奴だけど、もう少しだけその力を見せてくれるかなー」
言いながら盾を一度上に持ち上げて、今度は地面に置くとそれを今度はレベッカさんが地面にぶっさします。
「えーっと、これをグググッとこんな感じに……押します。で、それが出来たら、次はこうやって……引きます。もし、一人だと無理だったら仲間を使ってね?」
仲間を使ってね?って言いながらこっちを見るので、明らかに手伝いなさいと言われている感じですが、ヘビは一度こちらを見るとプイっといつものように視線を外したので、自分だけで十分と言いたい模様。
そして、地面に刺さっている盾に体当たりをするような形で首のあたりをこすり付けながら押すと、地面に刺さっている盾がズズズっとレベッカさん程ではないモノのそれなりのスピードで動きます。
「おー、簡単に押しちゃうかー」
このぐらいなら自分も出来るかと思って、ヘビが少し休憩をしたので自分も同じように盾を押してみるのですが、あれ?コレ地面に刺さっているというか生えているんじゃないかな?ってぐらい動く気配はなく、流石にコレだと本当に自分の力が弱すぎて悲しくなりそうだったので、後ろに大きく下がって自分の体重をしっかりと乗せての体当たりをしてみるのですが……うん、少しだけ。ピクリとは動いたかもしれない。いや、動いた。動いた。だって、ほら、レベッカさんの様な女性やこーんなちっさいヘビですら動かせたのに、ねぇ、おじさんだって頑張ったからね?ほら、このだるんだるんなお腹もぷよんぷよんしたし……。
「まあ、そうなると思っていたけど、現実を見るっていうのは……辛いね?」
ポン、と肩を叩かれましたがおじさんなのでもう涙は枯れているのです。悔しくないとは言いませんが、出来ないことは出来ないと理解する事も大事。いえ、諦めも一つの美学。
これは、そう、美学……なのです。
「まあ、うん、おじさんお仕事は頑張っているから、人は力だけじゃないから……ね?」
慰めの言葉がとても心にぶっ刺さるのですが、休憩が終わったヘビが今度は盾を引っ張るのですが、盾の持ち手の部分をヘビが噛んで引っ張るみたいですが、押していた時とは少し違い、地面が滑り過ぎるみたいで思ってるようには引けない模様。
「ほら、おじさんの出番じゃない?」
レベッカさんに言われて頷きますが、もう少し一人でやりたいという感じだったので少しの間はそのままやって貰っていたのですが、諦めたみたいで、口を外すとこちらを地面から上目遣いで見上げてきます。
「手伝う?」
その言葉の意味も分かっているのでしょう。
眼を一度閉じるような頷きを返したので、尾っぽの部分を持ってあげると、器用にそこからもう一度盾の持ち手に噛みつくと、ググっと引っ張る動きをするのですが、力が弱い自分のせいでそのままヘビがにゅるんと抜けた状態に。
「えーっと、ここまで弱いのは想定していなかったのかな?」
どうしようかと思ったのですが、ヘビはレベッカさんを見ると首を左右に振って、もう一度ここに来いと指示をしてきたのでそこに立つと、今度はくるりと手に巻き付ける形に。
「……おじさん、ヘビに知能まで……負けてるかも?」
「いや、うん……そうじゃないと……言いたいな……」
なかなかつらい現実ですが、ヘビはしっかりと盾も引っ張ることが出来ました。




