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 完全に強迫観念に囚われている状態でキャンプ地を出て丘の奥の方に足が動くのですが、見える景色はいつもとは正反対。

 青い空は赤く、いつもは穏やかな風なのに今日は強風が吹き荒れていて、そしていつもだとすぐに見つけられる薬草やキノコは全く見当たらない状態。

 まるで幽霊に憑りつかれているような足取りにも見えるようなふらふらとした状態なのはいつもだとない強風のせいなのですが、自分を客観的に何故か見ている感じもあって、色々と今日は不思議な感じ。


 いつもだと大きな石があってコレ以上は進めないという場所なのですが、いつもそこにあるはずの石はなくなっていて、そのまま奥に進むと自分の記憶と同じ森がそこにはあります。

 そして森の中へ入ると、風は何故か緩くなり木々の間から見える空の色はいつもと同じ青い空。

 ただ、そのおかしい状態に何故か自分は気がつけることは無く、強い力に引っ張られるように今度は森の奥の方に向かいます。


 さらに進むと、森がパッと開けている場所があるのですが、そこに居たのは四足歩行の獣と龍が混ざったような何とも言えないモンスター。

 とても力強そうな前腕には翼膜のようなものも付いていて、ただそれで空が飛べるかと言われると正直微妙ではありますが、風を受ける事は出来そうに見え、正直この部分だけを見たら獣かと言いたいのですが、首が結構長くその先にある顔の辺りを見るとその辺りはゲームやアニメで見たような龍種にも見えます。そして、ぎょろぎょろと血走った目で何かを伺っているようにも見えたので、目を合わせないようにゆっくりと後ろへと今更ながらに下がろうとするのですが、そこには何故か小さな木々が落ちていて。


 パキッ


 いい音が鳴ります。


 ちょっとだけ現実逃避をしていいのであればこれほど乾いたいい木材は着火剤にするのに困らない気がするのですが、うん、うん。このいい音で気がつかない訳……無いですよね。



 GYAAAAAAAA



 その咆哮は凄まじく、結構な距離を開けているのにもかかわらずこちらの身が竦むような大きな音で、よくよく見ればその声が出ている口の周りが歪むほどの音量もあるようにも感じます。


 なんでそんな悠長なことを考えられると言われそうですが、流石にこの状況は諦めたくもなるモノ。

 一応持っている短剣はありますが、コレで一撃を狙う……って何処を?

 こちとら体力100のひ弱な人間。

 じゃあ、走って逃げる……のもお腹のたぷたぷが邪魔をして多分無理。


「チートが無いと思ったら、ゲームオーバーがやってきた」


 人間完全に諦めると動く気力すらもなくなるという事を異世界に来て初めて知る事になったのですが、ただここまで完全に諦めると意外と思考はクリアなもので、ちょっとした悟りを開いたような状態になることが出来て、思っていたような慌てふためく死とは違う状況に自分自身が驚く事に。


 こちらが何もするつもりが無い事を理解しているようには見えない四足歩行の獣とも龍とも言えないソレの目は血走っているのですが、どうやらお腹が減っている模様。


「そこまで涎をだらだらと垂らすのはちょっとはしたないですって、聞いてくれる訳ないだろうけど、出来ればあまり痛くしないで欲しいけど……そうなるとパクっと食べられるより真っ二つに食べて貰った方がいい?いや、食べて貰って窒息死?どのみち辛い気がするな」


 自分の死に方を選べる状況ではないのですが、それでも出来ればあまり痛くないとか苦しくない方向で死なせて欲しいなんて言ったところで聞いてくれる相手ではないのですが、完全に開き直った今の状態だとそんなことを考えられる状況で。


「あのー、一応抵抗するつもりは無いので……って、言ったところで言葉が通じているわけじゃないよなぁ」


 そんな言葉を口から発したのですが、どうにも空の色がここに来たときの様な変な色に少しずつ変わってきていて、森の中はずっと緩い風だったのにさっきまでの強風が少しずつ吹き荒れる状態に。

 そしてその強風のお陰なのか、目の前に自分が居るにもかかわらず四足歩行の獣とも龍とも言えない奴はキョロキョロと周りを見回して、凄い跳躍力でもって後ろに三回ステップを踏むのですが、大きさがあるのでぶわぁっと凄い風がこちらに。


「うぇ、ぺっぺっ」


 凄い勢いのバックステップによって巻き上げられた草や木々が顔にバシバシと当たり、ぼーっと呆けるような感じになっていた自分の口の中に欠片が入ってしまって、それを吐き出すのですが、コレは死ななくて済みそう?と思えるぐらいどうやら四足歩行の気を引く何かが近くに居るみたいで、自分に対しての興味が無くなったのか上を見ながらキョロキョロし始めます。


「上に何か居たらすぐに分かるでしょうに」


 大きなものでも飛んでいればその下は暗くなるわけですし、上を気にしても仕方ないと思うのですが、ずっと上の方を見ている四足歩行は何かに気がつくと大きく上にジャンプ。

 上に大きく飛んだので、後は降りて来ると思っていたのですが大きく飛んで、そのまま降りて来ることが無く、あれ?と思って上を見るのですが、いたはずの四足歩行のなにかまでいなくなります。


「え?え?」


 意味が分からずに出る言葉は感嘆詞ばかりですが、何が起こったのかさっぱり分かっていないのですが、もしかして?


「助かった?」


 完全に諦めていたのですが、どうやら命を拾えたみたいなのですが正直言って何があったのかさっぱり分からず。

 ただ、風が強くなったり、弱くなったりがあった位なのですがソレが何かしてくれたとは正直思えないところもあって。


「でも、まああの風のお陰?」


 独り言をぶつぶつとつぶやくと、空が今一度赤く赤くなって今までとは比べ物にならない程の風がぶわああっと吹いて、その風に耐えられず思わず尻餅をつくことになったのですが、そのまま視線が上の方に行くとそこには何故か水たまりが浮いていて。

 その水たまりが四足歩行に何かしてくれたのかもしれませんが、何にも分からないまま。


「今度こそ、腰が抜けたかも……」


 つい数分前も同じような感じで動けなかった気がするのですが、また?と言われそうな気もしますがまた腰が抜けてしまった模様。

 ちょっと動けるようになるまで時間はかかりそうですが、


「生き残れるかな?」


 運がいいのか悪いのか、ちょっと何ともですがとりあえず生き残れたのかもしれないような?そんな状態です。







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