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なんとなく村に居てもいい空気をギルドの人達が出してくれていたのもあって、気がつけば一週間が経っているのですが、
「うぐぐぐ」
毎日同じことの繰り返しにはそれほど抵抗はなく大した金額を稼げないのは自分の体力のなさのせいというのもあって誰にも文句は言えないのですが、思っているよりもかなり遅いペースでの返済になってしまって悩ましいのですが、
「別に大丈夫だよー?」
「いえ、ギルドの皆さんというよりは自分の問題なので……」
どうにもこの村の人達はかなりいい人達みたいでよそ者の自分にもかなり優しくしてくれているのですが、なんというか普通この辺りで一度チート体験でもあってもいいような気がするのですが、その兆しはなく。
「体力100でしょ?」
「魔力10だもんね?」
「そして、動いても、動いてもお腹が痩せる様子もないし……」
「まあ、村的にはかなり助かっているから十分な働きだぞ?」
多少馬鹿にされながらも、一応フォローもされてしまうとコレ以上何も言えないのですが、
「そういえばあの二人がいつもの場所ではないところで獣のフンを見つけたらしい」
「んじゃ、まずは観察依頼かな?」
「そうなると思って先に二人に願いしておいた」
「オッケー、オッケー。依頼書の日付だけ間違えないようにして、後で持ってきてー」
「いや、自分で書けよ?」
「いやいや、受け付けた人がやるべきでしょ?」
「俺は門番だからな?」
「うぐぐぐ。仕方ない、このお仕事は……」
「新人にやらせる事じゃないからな?自分で……やれ」
チラリとこちらを見ているのでもしかしたら自分がやらされることになっていたのかもしれないのですが、どうやらその様子もなく。
「えーっと、危ない感じですか?」
「フンがあった位だと、危ないとは言えないな」
「という事は、明日もいつも通り?」
「まあ、毎日草も生えるし、キノコも生えるからな」
「そうそう。そろそろ最初の貸付分は返金が終わりそうだけど、私への寄付が全然なくておかしいなーって思っていたところなのよ。あ、因みに今欲しいのはこっちの王都ではやっているアイテムでね?」
何処からともなく雑誌のようなものを取り出すレベッカに対して、ウェージさんもスリッパを何処からともなく取り出してスパァンといい音で頭を叩くと、いつものやり取りが今日も始まるのですが、一応自分の返済はある程度進んでいることに安堵を覚えます。
「まあ、おっさんは偉いと思うぞ。たまーにいる一攫千金を狙うやつとかの行動もしないし、地道にコツコツ。一番長い気も出来るし確実な方法だからな」
「でもさー人生はやっぱりスパイスが必要じゃなーい?」
「それで命を失ったらおしまいだろ?」
「その時はその時でしょ」
ハッとした顔をウェージさんが何かを思い出したような顔をしますが、ただそれだけ。
少しだけ場が静かになったのですが、
「生きるときも死ぬときも、抗ってもダメな時はダメだし何もしなくても大丈夫な時は大丈夫。ままならないものですよ。人の生なんて」
とても含蓄のあるような哲学的な言い方をしているのですが、レベッカの顔はニヤニヤとあまりよろしい表情でもなく。
「与えられて、奪われて。そんな風に私達は出来ているって王都の歌でもあるじゃない?ムカつくけど、その通りだと思っちゃったから」
「まあ、そうだな」
「うんうん」
レベッカの顔は暗くなり、それにつられてヒックスとウェージの顔も暗くなるのですが、他のメンバーはその意味を自分と同様に知らないみたいなので何の話という顔に。
「まあ、明日もいつも通りって事だな」
その一言で昨日の夕食は終わる事になったのですが、
「なんだろう、絶対にヤバイ空気……っていうより、これはマズイとしか思えない……」
いつものように起床して、いつものように朝食を済ませ、いつもの流れでクエストを受注して、いつものキャンプ地に着いたのですが、明らかに昨日までとは違う状態。
空気が違うという言い方はしていますが、今見えている目の前の丘はいつもと色が違います。
「今の時間……って、時計もないんだったけど……夕方じゃないよな?朝起きてここまで真っすぐ来ているから、昼間のはずだけど……夕焼け色というか……いや、赤い空の翌日は雨とか台風の予兆だっけ?そう考えると……明日は雨?」
独り言をぶつぶつとつぶやいているうちに少しでも天気が変わることを願ったのですが、何の変化もなく。
寧ろ赤さは暗くなっていき、風もどんどん強くなっているような感じ。
「……ははーん。コレはイベントだな?えーっと、えーっと……あれ、記憶が微妙に定かじゃない?いや、違うか。この場所はモンスターをハンターするゲームでも見覚えがあって、その場合のココで出ていたモンスターは……」
思い出せるはずの情報がすぐに出てこないという嬉しくない状況ですが、考えなくても自分の年齢は結構いっているわけで、記憶力が低下していても仕方ないとちょっと辛い現実を見つめ直すことになるのですが、ゲームに似たこの場所で出ていたモンスターはたしか龍種。
「もしかして、もしかする?」
一週間ほど毎日ここに来て、薬草とキノコを採り続けたのですが、何故かありがたい事に敵という敵が出て来ることが無く、いつも安全な採取をしていたので普通のテンションとは違い、逆に敵やモンスターが見られるとちょっとハイテンションに。
そして念の為もっておけと言われた腰の重りである片手剣を触ってみるのですが、
「これを抜いた所で……多分無理かなぁ」
別に自分の人生を諦めた訳ではないのですが、ここまで自然を変えてしまう相手に片手剣一本でどうにかできるとは思えないわけで。
「……とりあえず見に行くか」
現在地はキャンプ地なので帰る事が出来るのに、何故かそんな選択肢が全く頭に浮かぶことは無く。
この元凶が見てみたいという好奇心だけが自分の心に強くあって、いや、寧ろ行くしかないという強迫観念に囚われたような状態でいつもとは違う丘へ進んで行くことに。




