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ワイヤーにある輪っかにどちらかの足を入れればいいのはなんとなく分かるのですが、実際足を入れてどうなるの?というのもあって少しだけ躊躇うのですが、撫子はどちらかというと急かしてくる形で肩の上なのにちょっとだけ前のめりのような状態。
流石にバランスが悪そうなのでそれを補う形で前へ前へと進んでいるうちにワイヤーの目の前に着くことになるのですが、
「これ、どうするのが正しいの?」
撫子に質問をしてみると、凄く器用に輪っかを自分で作ってそこに足を置くような動きを尻尾と胴体二つでもって説明してくれます。
「やっぱり足を入れればいいんだね?」
すりすり
一度深呼吸をしてみると、意外と自分が冷静になるような気がするのですが多分気のせいでもあって。
覚悟は決まったので右足をワイヤーの輪に入れると、何故かワイヤーがもぞもぞと動きます。それはモノなのに意思があるような動きにも思えるような不思議な感じでしたが、ワイヤーの輪っかが二つに分かれ、二つの輪で土踏まずを避ける形に踵の方と指の付け根より少し下辺りに。一つの輪っかで全体重を支えるとなれば多少不安定になる事も考えられるので、かなり足に優しい設計がされているというのを感じたのですが、ただそれだけ。
「足に体重が掛かり過ぎないようになっているのは分かったけど……」
人に見られているわけではないのでそこまでの恥ずかしさというのは無いのですが、ワイヤーに足を入れてその手でもワイヤーを掴んでいる状態。
ただ、何の変化もないので少しずつ恥ずかしさも出てきますが、どうやったらこのワイヤーが動くのなんて知らないわけで。
「どうすればいいのか知ってる?」
すりすり
知っているなら早く教えてほしかった!!と、思いましたが撫子は喋れるわけではないのでそこは自分が察するしかなかったわけでもあって。
「じゃあ、お願いしていい?」
すりすり
撫子は返事をすると、ワイヤーをぐいぐいっと引っ張ります。
そして引っ張ると同時に上に上がる感じがあって、気がつけば少しずつワイヤーが巻きあがっているのが分かります。
「おお?おお!おお!?」
若干の怖さはあるのですが、それ以上のワクワクが復活して思わず上を見てみるとなかなか面白い光景が。
「え?」
ワイヤーが降りている場所はロボットの股間辺りだという認識はあったのですが、ロープを登って見ていた時は真っ平だったはずの場所がごつごつとしているように見え、更にゆっくりと前後に開いて人が乗れるような状態になりつつあって、下を見る事を忘れる程に面白い光景がそこにあります。
そのまま引っ張り上げられると、位置としては股間辺りで目の前にはちょっとした足場があって、更にありがたい事に自分が巻きあげられて一定の位置に着くと同時に足場のようなものが下を覆ってくれて悪く言えば逃げ場が無くなりますが、よく言えば落ちない状態に。
思わず左右や上下を見回してみますが、あまり広さはなく両手を伸ばすことがギリギリできるかどうか程度で高さもそこまで高い感じはなく手を伸ばせば天井に付きそう。
と、自分一人がかなり興奮している状態かと思ったのですが、肩の上の撫子もかなり同じみたいで、肩の上からるんるんというかウキウキというか見ようによっては花が咲いていると言えるぐらいの感じ。
ただ、自分と少し違うのはキョロキョロと周りを見回すような動きは無くて、ただただ喜んでいるだけ。
「えーっと、この後はどうすればいいの?」
すりすり
手を伸ばす事が出来る場所だというのは分かっていたのですが、かなり暗く明るいスポットライトを浴びていたのもあって色々と見えない状態だったのですが、ひょいっと肩の上に居る撫子がジャンプ。
危ないとか何処へとか色々な言葉が出るより先にピタッと着地したのは多分椅子のような何かの上。
何故そんなことが分かるのかと言われれば、撫子が椅子か何かに降りると同時に薄く部屋全体が色付いたから。
「これは……」
見ればすぐに分かるような、これをただの椅子だと思う人は殆どいないと思えるような、そんな椅子。
その上に撫子は座っていて、舌をチロチロと出しながらもかなり喜んでいるみたいですが、クイっと顔を上げてこっちに視線を合わせると少しだけ伸びる動きで自分の手を引っ張ってきます。
引っ張られるままに椅子へ近づくのですが、椅子は座るモノ。
椅子に対して正面から乗っかるような形になるのはおかしいわけで。
「座っていいのかな?」
引っ張る力がさらに少し強くなって、少しだけバランスを崩しそうになるのですが手を引っ張りながらもこっちに乗り移りたかったみたいで、撫子がそのまま肩の上に戻ります。
「じゃ、座らせてもらうね」
椅子に座るだけなのにちょっとだけ緊張感があって、少しだけ不思議な感じもあるのですが、その椅子に座ってみるとなんというか懐かしい感じがあって座り心地はとてもよく、腰を守ってくれる感じがあって浅く座るつもりだったのですがそのまま深くしっかりと椅子に座る事に。
余りの座り心地の良さに少しだけワクワクを忘れる事になってしまいます。




