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 撫子が少しだけ支えてくれる形でロープを降りたのですが、思ったような変化は何もなく、流石にアレだけ色々とやったのに?という気分になったのですが、やったことが間違っていたとすれば、動かないのは当たり前でもあるわけで。


「頭を打って見ていた映像が正解だとは誰も言ってないから、動かないのは仕方ないのかもしれないけど、何というか……ちょっと疲れたかも」


 ワクワクと期待をしていたのもあって、何の変化もないというのはかなりがっくりと来るわけですが、落ち込むような形で肩を落としているとペチペチと撫子が頬を叩いてきます。


「どうかした?」


 ペチペチ


確認しても同じようにペチペチと何度もたたいてくるのですが、残念ながらその意味は分からないまま。

 ただ、気落ちしているのは伝わっていると思っていたのですが、珍しくぺちぺちが止まる事は無く。


「えーっと、何か伝えたいことがあるの?」


 すりすり


 撫子にしては珍しくちょっとだけウキウキしているような感じの空気で肩に降りるとそのまま下へ降りて今日何度目かの先導をしてくれます。

 そして着いたのはいつもの足元、ボタンの所。


「ボタン?」


 確認をすると、先を動いていた撫子がすぐに足元を伝って肩の上まで登ってきます。


 すりすり


「ボタンを押して取っ手が出て来たから、色々とやったんだよ?」


 すりすり


「まだ何かあるの?」


 すりすり


 と、独り言を喋るような形で撫子と会話をするのですが、またも頭痛が。

 頭の中心の辺りをズキズキとした痛みが走り、強めに目を閉じるのですがフッと浮かんだのはよく使っていたパソコンの画面。

 画面は勿論真っ暗で、電源コードを壁に刺し、電源のボタンを押すと少しだけ待つ時間があって、やっとパソコンが起動。買ってすぐの頃は数秒も待たずに起動していたのですが、かなりの年数を使っていたので起動も遅くなり、更に反応も少しずつ悪くなっていたのを思い出します。

 そして、起動したらいつものファイルを開く動きをするのですが、そこでもう一度頭痛があって、目を開けるとロボットの足元に。


「うんうん。考えてみたらそうだよね。さっき入れた木と魔法陣が電源とするならそれを入れただけで勝手に動くロボットって怖いね。電源ボタンを押さないと動かないのが普通だわ」


 頭痛でハッと思い出すのも変な話ですが、ロープを掛けていたロボットが動力っぽいモノを入れただけで勝手に動いちゃったら正直困ったのは多分自分。

 勝手に動いてロープを引きちぎられていたら逃げる事はもちろんできず、さらに言えばあの高さから落下していてもおかしくなかったハズ。

 それこそ命が幾つあっても無理な話になりそうなので、動かなかった事を残念がるよりは、安全だったことを喜ぶべきだという事に気がついたのですが、撫子がここに案内をしてくれたという事を考えれば、今度こそこのボタンを押せば、やっとロボットが動くような気がしてくるわけで。


 一度裏切られたような状態だったのもあって、もう一度ワクワクし始めると顔が緩むのがよく分かります。


「このボタンを押してって事だよね?」


 すりすり


 と、ここで思ったのは自分が押していいの?という事で、かなり硬さがあってあまり奥まで強く押せないので大丈夫?という感じだったのですが、撫子は自分で押すつもりはないみたいで、頭の上の定位置に戻ります。


「じゃ、押すよ」


 すりすり


 撫子の返事があったので、つま先立ちになって右手を伸ばせるだけ伸ばし、そしてグイっと右の親指を使ってボタンを押すのですが、今までのような硬さはなくむしろ簡単に押せる感じ。


 動力っぽいモノを入れて、電源のボタンを押したような形にこぎつける事が出来たので、後は動くのを待つばかり?という状態になるのですが、何かちょっと嫌な予感が。


「……動かないね?」


 すりすり


 撫子は肯定の意味のすりすりをしてくれますが、期待がかなり高まった状態でやっぱり動かないのって結構寂しいというかつまらないというか正直ガッカリになるわけで。


「あれ?どうかした?」


 頭の上の定位置に居る撫子が今回もまたすすすっと肩に降りて、そのまま肩から下にもう一度降りて今は右足の足元に居るわけですが、ちょうど反対側の足との間の方向に一人で勝手に向かいます。


「えーっと、ボタンを押したら今度はそっち?」


 返事はなくこちらを待つ様子もなくどんどん進んでいくので少しだけ小走りになる形で撫子を追いかける事になるのですが、来た場所はいつもボタンを押したあと登っているロープの辺り。


「えーっと、ボタンを押したからもう一度上に登るの?」


 結構面倒だなぁと思いながら一応確認したのですが、その声には反応せずに少しだけいつもの場所と外れた位置まで撫子が先導するのでそれを追いかけていくと、そこにあったのは一本のワイヤー。


「ん?ワイヤーなんてあったっけ?」


 いつも登っているロープの横に少しずれた位置に一本のワイヤーがあって、撫子がこっちに急いで戻って来るのですが、そのワイヤーには足を入れるような輪っかが。


「え、え?もしかして?」


 撫子は肩の辺りに腰を落ち着けると、チロチロと舌を出しているのですがその顔はかなり喜んでいるように見えます。



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