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 キッカケが何だったか覚えているかと言われても何もきっかけになるようなことは無かった気がするのだが、強いて言うなら左手の中指が痛くなったことぐらい。

 ただ、別にそこを強打した記憶もなく……いや、左手でスマホを見る事もない訳じゃないのでその時に当たったのかな?そんな感じに記憶が曖昧な状態ではあるのですが……。


「……そろそろ現実に向き合うべきか?」


 座ったまま言葉を発してみたのだが、勿論返事など返ってくることもなく。


「さてと。アニメを見ながら寝ていたはずなんだが……知らない天井だ。…………ついにあのアニメのセリフが言える日が来るとは。コレは夢か?幻か?」


 寝起き……なのかも怪しい部分はあるのだが、目が覚める前は多分自分の部屋だったはず。長い時間(・・・・)居た場所だったから間違えるわけもなく、言葉に出してみてすぐにやった行動は当たり前だが自分の頬をつねる事。


「いたひ」


 そこまで強くつねったつもりはないのだが、夢ではなさそうな微妙な痛みが頬から脳へとここが現実であることを知らせてくれた。






 現状の理解が終わったら、とりあえず立ち上がってみる事に。

 そこで今更ながら自分の恰好はいつもの部屋着のスウェットの上下である事を確認。更に足がすーすーするのはそのまんま素足だからという事に気が付いたので靴下でも欲しい所ではあったのだが、そもそもこの場所が何処なのかも分かっていない状態なので理解とは別で現状確認をすることに。


「靴下も履いてないってことは多分部屋で寝ていたのは間違いない訳か」


 いくら独り言を言っても勿論なにも返ってこないのですが、今自分の中にはありえないと思いながらも試してみたいことがあって、





「ワンチャン、可能性はあるよな」





 そう、今の自分がどういう状態なのか確認出来る方法が一つパッと浮かんで来たのでその確認がしたいので早速やってみる事に。

 ドキドキとワクワクの二種類の気持ちが七割以上を占めていて、残りの三割は一応ダメだった時用に保険として残したい気持ちはあるのですが、七割あった気持ちがぐんぐんパーセンテージを上げていって自分がその言葉を発する時には九割以上がドキドキワクワクに。



「ステータス、オープン!」



 言って直ぐ、目の前に出て来たのは予想通りのウィンドウ。



「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」「キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」



 思わず言葉を重ねるぐらいに嬉しい出来事だったのでガッツポーズ。

 期待通りのウィンドウを喜んで見てみるのですが、ガッツポーズの両手のグーがゆっくりほどけてしまう数字がそこにはあって



 (名称未設定) 男 1/1

  体力   100

  魔力   10

  ――

  ――          




「……体力が100はまあわからなくないけど、魔力の10は怪しいような?っていうか、1/1ってまさかレベルは上がらない?」


 ステータスが見られる喜びは一瞬と言っていい位の時間でこのステータスがそこまで高くない事を一応すぐに理解。


「いや、ステータスが低くてもやりようはあるはずだし……というか魔力があるって事は魔法があるって言っているようなもんだよな。よくあるイメージの話でいえば何十年も想像はしてきた世界だからコレは……勝ったな」(ニヤリ)


 別に何かと戦うわけでもなく、勝負をしていたわけでもないので勝った負けたはないのですが、両手を胸の前に組んで隣にいるはずのない先生が言ったような状態を想像しながらぽつりと言葉を零しますが、返事は勿論なにも返ってくる言葉は無く。


「アニメとかドラマとかテレビは見まくっていたけど、……セリフの後に返事が無いと寂しいもんだな」


 この独り言にも勿論返事なんてないわけで。

 ただ、現状確認が出来たので残るのは行動する事ぐらいですが、


「動くべきか、動かざるべきか」


 正直に言えば動きたくない状況。というよりも、こういう時がもしあったとしても動かないタイプだと自分は思っているのですが、それにも一応理由があって。


「このお腹(・・)だしなぁ」


 下を向くと贅肉ダルダルなお腹がボテっと見えて、そのまま自分の身体を見る事になるのですが、肌はかなり白く焼けている部分もない状態。

 全体的に体は重たそうで、客観的に自分を見るつもりはないのですがどう見ても動きが素早いタイプ、動けるタイプには見えません。


「でも……」


 正直ここに居ても何も変化はなさそうで、そうなって来ると次に心配になって来るのはやはり食事。


「自分の部屋は素晴らしいんだな……」


 部屋から出なくても毎日飯が届けられ、それを食べて置いておけば勝手に下げられて、調子が悪ければ食べなくてもいいわけで。


 勿論こんな状態の生活をいつまでも出来るわけなどない事は分かっていても、更にもう一歩踏み込んで変わっていく勇気というのは殆ど無くって。

 寝る前に偶に襲ってくる得体のしれない恐怖に何とか押しつぶされないように気を紛らわせるためにゲームやアニメに没頭していたのに、それでもフッと思い出す瞬間があって、それでどうしても怖くなって肩を震わせることも。


「ただ、ここは自分の部屋じゃ無いか」


 ここが人の家なのか、倉庫のような場所なのかそれすら分からない状態で、それでも一歩目を踏み出さないといけない状態。

 すぐ近くに扉はあって、あの扉を開けた先は自分が変われる可能性があるとまで思った異世界。ただ、その扉を開けてしまったら戻れる可能性も減りそうな気がして、それが怖くて一歩目が踏み出せず。そしてまた得体のしれない恐怖が自分を襲ってくると思わずペタンと地面に座ってしまいます。


 座ってしまって、また悩み始めると動けなくなって。

このまま動けなくなりそうになっていくかもしれないななんて思っていたのですが、ぐーとお腹が鳴ることに。


「何もしなくても、腹は減るか……」


 見つめる先は自分の腹でなんとなく少しだけ自分自身に悔しさがあったので両手の人差し指を使ってお腹をぷにぷにと突っつくのですが、帰ってきたのは先程同じぐーというお腹の音。


「ここに居ても、食事はない……か」





 正直言って、「生きたい」か「死にたい」かどっち?と、もし人に聞かれたらどっちでもいいやと答えたいのですが、このお腹の音は「生きたい」と主張していて。

 自分の意思がないなら、このお腹の意思に任せるのもいいかもしれないという投げやりな気持ちで決めるのもどうかと思いますが、自分で今決める事が出来ない以上流れに乗ることもいいかなと思ってしまったので、立ち上がってみる事に。


 立ち上がって一、二、三歩。

 目の前に扉があって、後はこれを開けるだけ。

 ブルリと体が震えましたが、目をきつく閉じてそのまま右手を伸ばしてドアノブを下げるとそのまま扉は簡単に開きます。




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