表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【500文字小説企画】タンポポ

しいな ここみ様主催、500文字小説企画参加作品です。

 イーペーコーは置鮎一平の高校のときのあだ名である。一平とは誰も呼ばなかった。まして置鮎くんなどとは。

 イーペーコーも平気なものだった。周り以上に彼もそれほど頭の出来が良く無かった。高校は名前さえ書ければ入れると言われる底辺だったが、彼は入試で自分の名前を「あきおゆ一米」と書いたという、後々まで語り継がれる伝説の男だった。


 高校を中退した彼は食品加工の工場で働いた。ラインで流れてくる刺身にタンポポを乗せる仕事だった。

 彼にはタンポポという新しいあだ名がついた。仕事だけでなく悪い先輩にくっついて盛り場をふわふわと歩くのもその理由だった。

 酒に溺れパチンコを覚えた彼の手元には当然ながら給料は残らなかった。さらに残念な頭の彼は騙されてゴッホの弟子が描いたというタンポポの絵を買わされ、借金まみれになった。


 街から消えた数年後、彼は手錠をかけられた姿で朝のニュースに登場した。闇バイトの捨て駒にされ、強盗傷害の罪で実刑を受けた。裁判では涙を浮かべ「最初からやり直したい」と反省を述べた。


 しかしてその言葉は叶えられる。刑務所の労働で彼に与えられたのは、刺身に乗せるタンポポをビニールハウスで育てる仕事だったからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ブラック世の中だ。 タンポポの苦みが効いておりますな。 淡々とした文章の畳みかけが心地よく闇に誘います! ありがとうございました。
そこが原点?!Σ(゜Д゜)
高校を中退してからというもの、一平さんの人生はタンポポと切っても切れない仲になってしまいましたね。 それにしても、彼も「最初からやり直したい」という願いがこういう形で叶うとは思わなかったでしょうね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ