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ワシリイの秘密

 数週間後。外装工事も終わり、いよいよ舞台は整った。

 

 以前、レオンたちが話していたことをご記憶だろうか? 鳳雛剣に太陽の火力を、臥竜剣に地球の水力を、と密談していたアレだ。

 

 太陽の火力を集めるのは比較的簡単だった。日差しの強い日を選び、太陽が南中したのを見計らって、南のヨウグ塔ハイサイドライト下にある、マントルピースに聖杯を置くのだ。すると、マナの聖杯が灼熱の光を放つ。メシヤはすかさずその光を集めた。

 

「Say When !(いいところで止めて!)」

「まだです。まだまだです」


 マナはメシヤの傍に近づいて、串焼きを調理した。

「太陽光で直火焼きなんてなかなか味わえないぞ」

 メシヤが妹の要領の良さを見てグルメレポートをする。


「あ~ッ、いいなア、マナ!」

「まだまだありますよ、エリさん」

 エリも負けじと串を焼いた。

そんなこんなで、エリたちの腹が満たされる頃には、レオンのOKが出た。

 


 別日、メシヤとレオンが北のシイベル塔の前に集まっていた。ここ数年、未曾有の大洪水が世界各地で起きている。地球温暖化と集中豪雨は複合的な要素が絡まって発生するのだが、その講義をするにはあまりにも紙幅が足りない。

 

 太陽光を集めるのは、目的のブツが天上に見えているので問題は無かった。だが、水力となるとこうはいかない。ワシリイ宇宙センターは海辺でもないし、山のふもとだ。

 

「海洋上昇分の水をマナの聖杯から湧出させればいいのですが、そんなことをしたらここが海の底に沈んでしまいますし、量が膨大すぎて現実的ではありません」

 レオンが諭すように説明する。

「うんうん」

 メシヤはレオンの言うことを素直に聞いている。

「そこで、マナの聖杯を巨大な蛇口に見立てて、各余剰水域をつなげるのです」


 それを横で聞いていたマナが不安そうにメシヤたちを見つめる。

「聖杯の向こうに水があるものとして、臥龍剣にチャージするんだね。でも、マナの体に異変は起きないかな?」

 メシヤが妹の身を案じて質問する。

「心配ありません。太陽の火力を集めたときもそうでしたが、これらはマナさんの身体と等価交換をするわけではありません。今回の聖杯の使い方は、SF漫画に出てくるように、空間と空間をつなげるドアの役割をさせるのです」

 

「ほっ、なら良かった」

 メシヤがそうつぶやいた後ろで胸をなで下ろすマナ。

  

「エメラルドタブレットを貸していただけますか?」

 レオンはメシアに促した。

「うん、ちょっと待って」

 メシヤは背中の鞄から石版を取り出して渡した。レオンはそれを受け取ると、なにやら古めかしい遠い国の言語をつぶやいた。

 例のごとく、石版がエメラルド色に輝いた。ぼんやりと浮かんだ光の文字を、レオンは素早い手の動きでタイピングしている。

「す、すごい・・・」

 居合わせた藤原兄妹は固唾をのんでいる。

 

「ポンポロポン♪」

 レオンがキーを打ち終わると、デコード完了の合図であるハープの音が鳴った。





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