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シックスヘブン

「南野さん、思い出しました! こいつ、六天ろくてん小学校しょうがっこう悪鬼あっき羅刹らせつ、安倍マリアです!」

 南野の配下の者が叫んだ。


「不名誉な二つ名ね」

 やれやれと言った表情でため息をつくマリア。


「はあはあ」

 息を整える南野。そして、形勢逆転とばかりに、マリアに向けて鈍く口を開いた。

「・・・お前、六天小学校ってことは、Z地区出身か?」

 マリアの顔の各パーツ、髪の毛が逆立つかのように緊張するのが見えた。


 Z地区は、遠く離れた他県にある。だが、六天小学校という名前は、聞く人が聞けばすぐZ地区と結びつけられるほど、世間を賑わす学校名であった。

 Z地区。それは、現代日本における解答不能な問題。マリアはいつもそのことで苦しんできた。


「はっはっは。お前はな、どうあがいても、この日本では泥の川にかって生きていかなきゃいけない運命なんだよ」

 14歳とは思えない罵声を浴びせる南野。

 目を細め哀しむマリア。何度も言われてきたこととはいえ、慣れることはない。


「やめときな」

 河原の草むらの陰から、声が聞こえた。


「そんなことで人間同士が憎み合うのって、すごくくだらないよ」

 きよめ餅のように、肌のつやつやとした童顔の少年がそこにいた。


「やっかいな奴が来たな」

 その少年と南野は、同じ八山はっさん小学校しょうがっこう出身である。南野はその少年のことをよく知っている。どんな手段を使って悪戯を仕掛けようとも、ことごとく空振りに終わる。自分がひどい言葉を吐いても、奇妙な言動を返され、なぜかその場が和んでしまう。可愛い子にちょっかいを出したくなる、悪ガキの心情だった。


「もう、行こうぜ」

 南野は賢明な判断でその場を去った。


「とりあえず、礼を言っておくわ。ありがとね」

「危ないところだったね」

「あたしは全然平気よ」

「いや、あの南野さんがあのままじゃ危なかったなあって」


 まさかそんな言葉を掛けられるとは思わなかったのだろう。マリアは軽く調子が狂った。蹴りを入れたシーンも見ていたらしい。






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