セブンスターバプテスマ
「なによ、あの子・・・」
北伊勢市立七星中学校の入学式。ひときわ目を引く金髪ロングヘアの少女がいた。勝ち気そうなその表情・風貌から、近づきがたい雰囲気を放っていた。
「どこの小学校だよ」
入学式というものは、知らない顔も多く、雑談も少なめでたいてい静かだったりする。だが、今年の七星中学の入学式は、教職員・生徒ともにざわざわとしていた。
それでも入学式はさして影響も無く、最後までプログラムを終えることができた。
翌日、新入生たちが登校し、それぞれの教室へと移動する途中のことであった。
「おい」
さっそく来たなと、余裕綽々《よゆうしゃくしゃく》で金髪の少女は振り返った。
「なにかしら?」
「ちょっとツラ貸せよ」
体育館裏に連れて行かれるのかと少女は想像したが、学校近くの河川敷まで移動させられ、その景色に開放感を覚えた。そんな伸び伸びしているシチュエーションではまったくないのにもかかわらず。
「おまえ、名前なんて言うんだよ」
不良グループのリーダーらしき少女が問うた。
「マリアよ。安倍マリア」
「ふざけてるのか? その頭。新入生がいきがってんじゃねーよ」
「生まれつき。と言っても、信用してもらえなそうね」
「誰が信じるんだよ、そんなの。実はハーフです、ってか? バリバリ日本語しゃべってるじゃねーか」
「あたしの家系も御先祖様は謎なんだよね」
イライラする不良たち。
「南野さん、やってしまいましょう!」
手下に促されると、グループリーダーの南野が、カッターナイフの刃をスライドさせて、マリアの髪を切り落とそうとした。
「あ~ら、正当防衛成立ね」
マリアがオーソドックスに構えると、左前足で南野のナイフをはたき落とした。続けて、空手の教科書に出てくるような見事な二枚蹴りを、南野の顔面に命中させた。
「あ、あ、・・・」
生まれてこのかた、父親にも殴られたことのなかった南野は、慌てふためいた。
「まだやる?」
不敵な笑みを浮かべるマリア。