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ハラッパーの真ん中で  作者: 三重野 創


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萌えてヒーロー

 メシヤはサッカー部に所属している。家の手伝いでそんなには顔を出せないが、部員からはそのプレースタイルを買われている。

 「毎日来れないのか?」と、キャプテンから懇願される日々だ。


 メシヤは体格に恵まれているわけではない。中肉中背、身長も体重もごくごく平均的な日本人のサイズだ。ただ筋肉はしなやかで、弾力がある。マッチョではないが、無駄のないシルエットをしている。


 メシヤがこんな提案をしたことがある。

「サッカーで一番優れているフォーメーションは3-4-3ですよ」


 大空キャプテンは、今の主流の4-2-3-1を採用していた。これはどちらかというと守りに比重を置いた布陣だ。いかにも日本的とも言える。


「大空先輩。確かにディフェンスには適していますが、このサッカーは楽しいですか?」

 大空は痛いところを突かれた。


「3-4-3で攻めている間はディフェンスをする必要がありません。両ウイングがいるので、相手のサイドバックが上がってくることも牽制できます」


 メシヤはさらに続ける。

「4-2-3-1で引いて守っていたら、相手の攻撃時間も自ずと増えます。カウンター狙いだけのオフェンスってつまらないですよ」


 血気盛んな体育会系ならメシヤは袋叩きに遭いそうだが、大空キャプテンがいたことに救われた。彼は聞く耳を持っていた。


 大空キャプテンは北伊勢高校サッカー部の決定力不足に悩まされていた。そこへこの男が現れた。希望のポジションを聞くと、「レフトウイング」と即答した。


 このポジションは点取り屋・テクニシャン・ファンタジスタとありとあらゆる要素が詰まった花形のプレイヤーを生み出してきた。


 優れたレフトウイングのドリブルは進路も先が読めず、シュートも突然撃ってくる。パスは必ず意図があり、貪欲に得点に絡んでくる。サッカーはこんなにも面白かったのかと酔わせてくれる。それがスタープレイヤーの証だ。


 メシヤは学校中の生徒から変わり者で通っているが、サッカーで汗を流す姿に見惚れる隠れファンも多い。隠れているので、メシヤは気づいていないのだが。








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