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天国と地獄

 マリアは聖ヨハネ北伊勢教会隣りにある、女子修道院に寝泊まりしている。自室にはミニチュアを作成できるようなスペースが無いので、教会内の一室でナゴブロックの作成に取り掛かっている。

 神父に技術課題のことを話したら、喜んでOKをもらえた。2000年前に降臨した神の子は、大工であった。よく働き、モノを作り出すことは、神の御心みこころにかなっているのだろう。

 

「熱心ですね、マリア」

「あたし、こういうのは性に合ってるっていうか、昔から好きなんです」

「あなたがここへ来たのは、12の時でしたね。その時から人一倍好奇心が旺盛でした」

「手もつけられなかったですけどね」

「マリア。あなたはここへ来て変わったというよりも、メシヤくんとの出会いが大きかったのだと思いますよ。学校から帰ると、よく彼の話をしていましたし」

「神父様にはかなわないですね。でも、絶対あいつの前では、そのことを話さないでくださいね」


「マリア。あなたの境遇を思えば、ああして道をそれてしまっていたことは、いたしかたの無いことです。あなたは十分苦しみました。そしてその罪も償っています」

「うっ、うっ・・・」

 マリアの背中に手をやる神父。涙ながらマリアはなんとか声を振り絞った。


「どうして人は、生まれや育った環境の違いで、あそこまで他人を憎めるのでしょうか?」

「マリア、もうそこまでにしておきなさい」

「いいえ! 私の人生は地獄そのものでした! ひょっとしたら、地獄のほうがまだマシだったかも知れません!」

 黙ってマリアを見据える神父。


「あたしの家のありかが分かると、それまで親しくしていた友達が急に冷たくなりました。マリアちゃん、ゴメンって。何度聞かされたか分かりません」

「マリア・・・」

「私は荒れに荒れました。家が貧しかったので、汚い大人たちを相手に、生活費を稼がざるを得ませんでした」

「マリア、それは言葉が過ぎますよ」

「ごめんなさい。神父様にはとても感謝しています。神父様は私の身の上事情など、一切気にせず、受け入れてくれましたから」


「住む場所が変わって、新しい生徒たちと過ごせたのは、マリアには幸運でしたね」

「はい。メシヤもイエスくんも、とてもあたしに優しくしてくれました」

 作成中のミニチュアに目を落とす神父。マリアも少し落ち着いたようだ。


「マリア。夢の家ということですが、伴侶はもう決まっているのですか?」

「もう! 神父様って、けっこう意地悪ですね!」


 神父の許しを得たものの、修道院に戻らねばならず、マリアは夜9時には自室へと帰り、消灯した。











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