クオドリベット(談論風発)
自室でナゴブロックを作成するメシヤ。離れてマナが見守る。下から一個一個積み上げていくと言うよりも、何個かのまとまったパーツを別々で作りあとで繋ぎ合わせるという段取りの方が、作業効率は良い。
「これって、デジタルに家を造るって感じだね、お兄ちゃん」
「そうだな。何個目のポッチに次のブロックの角をはめるのかってのは、ドットの考え方と同じでデジタル的だな。図面で書いても伝わりやすいし」
「楽器でもアナログ的なモノとデジタル的なものってあるよね」
「ほう。どういうことだ。お聴かせ願おうか」
「わたしはバイオリンとか音の連続性のある弦楽器は苦手なんだけど、ピアノみたいに音が一対一対応してる鍵盤楽器のほうが得意だな」
「ふむ。確かにギターは左手のコードを押さえる指に、ある程度の遊びがあるとも言えるな。だが、その幅のあるはっきりと定まらない音が苦手な奏者もいるだろう。そういう人はピアノ向きだろうな」
「そうなの! で、家造りも職人さんの勘とか経験に左右されやすいアナログなものだと思うんだけど、ナゴブロックみたいなデジタルな仕組みなら、品質も一定に保たれるんじゃないかな?」
「おいおい、マナ。お前学校出たら十九工務店に雇ってもらえよ。今の台詞聞いたら即採用してくれるぞ」
「フフ。嬉しいけど、めし屋フジワラはどうするのよ?」
「俺がいるじゃん」
「お兄ちゃん、継ぐ気ないでしょ~」
「まあ、俺も将来のビジョンはハッキリ決まってないからなあ」
腕組みをして考え込むメシヤ。
「お兄ちゃんは好きなことをしたほうが絶対いいと思う。お店のことは心配しないで」
「どっちが年上なんだか分からないな。ありがとうな、マナ」
そうこう言っているあいだにも、着々と積み上がっていくナゴブロック。この日は時計の針が12時を回っても、部屋の明かりが消えることはなかった。