表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/219

技術課題

 日本政府は理系教育推進に舵を切った。リケダン・リケジョを養成し、モノづくり大国の復権を目指す。理系畑出身の鷹山が口酸っぱく発言してきたことがようやく実り、江馬総理が重い腰をあげた格好だ。


 北伊勢市は理系教育が盛んで、建設業・自動車産業に就くものが多い。製造工場も多く、手が器用な県民性である。

 北伊勢高校では、男女ともに技術の授業が必修だ。営業や経営の道に進もうとも、現場をわかっていないものは大成しないとの方針である。そのまま大学に行かず、エンジニアになる者も多数だ。


 今年度の北伊勢高校では、技術の課題が「理想の建築物」だった。小学校の夏休みに工作の課題で出されたことがあるだろう。立派な建物を作ってくる生徒もいたが、あれはいわゆる、組み立てキットと呼ばれるものである。技術教師の杢生もくおたくみは、このズルをしないように始めに釘を刺した。生徒たちからため息を漏らす者もいたが、仕切り直して構想を練り始めた。




「イエスくんは何をつくるの?」

 マリアが興味深そうに聞く。

「名古屋城にしようかなと思ってるよ」

「イエス、どうせなら桑名城がいいよ。僕らの地元だし。

 北伊勢市は三重県北勢地区の市町村が合併して出来た、新しい都市である。桑名市はその合併の中心となった市だ。

「うむ、それもいいな」


「マリアは?」

 メシヤがマリアの才能を知った上で問う。

「へっへーん。あたしはベルサイユ宮殿をモチーフにした、夢の家を作ってみせるわ」


「まあ、素敵ですわ。マリアさま」

 マリアは小さい頃から相当苦労したらしく、家の手伝いや秘密のアルバイトなど、手を使うことには慣れている。


「そういうレマちゃんは?」

「わたくしはお姉さまとの合作で、イスラエルの第三神殿を作りますわ」

「ワタシはデッサンなら得意なんだヨ!」

 小さい体で得意そうに胸を張るエリ。


「うおー、みんなすごいな」

 メシヤの目が爛々と輝く。

「あんたはどうするのよ?」

 マリアが興味半分・不安半分で聞いた。

「僕は聖ワシリイ大聖堂をベースに、市民の憩いの建物を造るよ。宇宙からの来訪客にも目 

立つようにね」

「・・・あんたらしいわね」

 口元がるマリア。


「よーし、みんな造るものは決まったかー」

 技術教師の杢生が声をかけた。まだテーマも決まらずぶつぶつ言う者もいたが、北伊勢高校に進学した生徒は勉学のためだけでなく、手に職をつけたいと希望する者が集まっている。東海地区がものづくりの盛んなことと無関係ではない。


「材料は何を使ってもいいぞー。ただし、既成品の組み立てキットをそのまま提出したら、

大減点だぞ」

「はーい」

 生徒の温度差はまばらだったが、杢生に指導してもらうために、人だかりが出来ていた。


 街並の最小構成単位である家。その中には国民の最小集団である家族がある。住みよい家は間違いなく、その住人すみびとにプラスの作用をもたらす。いては、明るいまちづくりに繋がる。イエスの愛読書ではないが、『家造りはひとづくり』なのである。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ