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鼎談

「君がメシヤくんだね」

「お初にお目にかかります、鷹山さん」

 イエスの自宅応接間にて、メシヤと鷹山が対面している。その二人の斜め45°にイエスが座っている。


「驚いたよ。ロックフォーゲル大統領と会ったそうだね」

「ええ、ナイスガイでしたよ」

「君のことを色々調べさせてもらったよ。気を悪くしないでくれ」

 申し訳ないといった表情で軽く頭を下げる鷹山。

「政治家の先生が一般人と会うときに身元を洗うのは当然のことです」

「ありがとう。理解が早くて助かるよ」

 顔がほころぶ鷹山。


「鷹山さん。きょうお越しいただいたのは、あの件ですね?」

 イエスが仲介役をする。

「おっと、そうだった。ロックフォーゲル大統領が特別視しているメシヤくんに、私も大いに興味を持った。イエスくんからも、メシヤくんは面白い人物だと聞いている。固くならず率直な意見を聞かせてほしい。政治だけじゃなく、困っていること、悩んでいること、なんでも話してもらって結構だよ」


 メシヤは三度軽く頷いたあと、こう切り出した。

「鷹山さんのご著書、『世界改造計画』を読ませていただきました」

「おお、若いのに感心だね」

「あれは故・田仲たなか総理の御意志を継いで更に発展させたものだと思います」

「その通りだ」

「鷹山さんも元々は保守党でしたね」

 イエスが補足説明をする。


「そう。田仲のオヤジがいたときは保守党も健全だった。だが、オヤジが逝ってからというもの、党内は悪巧みをする連中を抑えられなくなった。そして今の有様に至るという訳だ」

「ロックフォーゲル大統領就任で風向きが変わったのではないですか?」

 イエスも政治の話題にはのめり込む。

「うむ。確実に変わってきている」

「詳しくお聞かせ願えますか?」

 メシヤが問う。


「君たちもテレビやネットニュースなどを見ていて、おかしいと感じることがしょっちゅうあったと思う。たとえば、誰が見たってこの案件はこう処理すればいいだろうということに対して、足を引っ張るような勢力があらわれて邪魔をする、というような現象だ」


 黙って次の言葉を待つメシヤとイエス。

「ところが、ロックフォーゲル大統領が就任してからというもの、日本の意思決定に大きな妨害工作といったものが薄れつつあるんだ」

「ですね。揚げ足をとるような物言いも報道ではめっきり減りました」

 イエスが頷く。


「うむ。私はロックフォーゲル大統領が一枚も二枚もかんでいると思っている」

「東アジア圏の争いの火種を作り出していたのは、戦争屋のデマですもんね。一般国民同士は、その情報操作に惑わされていたと」

 メシヤが持論を展開する。


「今までの日本は、努力しても報われないような虚無感が支配していた。たとえるなら、せっかく苦労して掘った穴を別の誰かに埋め戻されてしまう。掘っても掘っても成果が出ず、病んでしまうんだ」

「言えてますね。ただ、保守党の言うことは、ほぼ未来党の言うことと一緒になってきまし 

たね?」

 イエスが訊ねる。

「そうだな。まだ不祥事は頻発してはいるがね」


「次の総選挙では未来党が躍進しそうですね」

 メシヤがヨイショする。

「はっはっは。だといいがね」

「さきほどの世界改造計画についてなのですが」

 メシヤが丁重に切り出す。

「うむ」


「保守党の政策が未来党と似通ってきたとはいえ、大幅な公共工事には消極的です。江馬えば総理は緊縮財政を推し進めていますからね」

「詳しいな。確かにその通りだ。先の大震災でインフラの整備が急務だというのに、その辺は及び腰だ」

「保守党の消費増税は、社会福祉に使うと言っていたのに、負担が増えるだけで全然国民の生活は楽になりません。挙げ句の果てに自分たち公務員の給与をアップしました」

 イエスが鼻息を荒くする。


「君たちの怒りはもっともだ。国民が血税を納めても、政治家や役人が肥え太るだけ。先ほどの穴掘りのたとえと同じだな」

「戦争屋の妨害工作が無くなっても、国内経済的にはあまり変わっていないですね」

 メシヤが国民の財布事情を心配する。

「うむ。テレビや新聞の報道だけでは、また保守党に票を入れる層が多いだろう」

「困りましたね」

 イエスもうつむく。

「僕の考えを聞いていただけますか?」

 メシヤがにっこり微笑んだ。




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