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砂漠の国からはるばると

 四月から北伊勢市に移住してきた生徒が二人いる。新入生ばかりなので新たな気持なのは同じなのだが、純和風の1年G組の生徒たちとはルックスがまるで違う。

 裁紅谷さばくたにエリと裁紅谷レマ姉妹。日本と約9000キロ離れたイスラエルからやって来た。父親は日本人なのだが、母親は生粋のユダヤ人らしい。背は小柄で髪がライム色だ。


「シャローム!」

 満面の笑みを浮かべてエリが教室に入ってきた。レマは蚊の泣くような声で「おはようございます」と続いた。


 メシヤはまずいと思ったのか(めし屋が不味かったら商売上がったりだが)、両手に持った剣の柄を隠した。

「何を隠したのかナ~?」

 小悪魔とはエリのことを言うのだろう。メシヤはこのままやり過ごすのは無理だと感じた。


「これさ」

 メシヤは観念してエリとレマに柄を見せた。


「!」

 無表情なレマの顔色が変わった。


「イエスさま、これはどちらで手に入れたのですか?」

 メシヤとエリの掛け合いをよそに、レマがイエスに尋ねる。


「ああ、これは北伊勢教会で見つけたんだよ」

 イエスは包み隠さず言った。


「レマちゃん、何か知ってるの?」

 マリアが話に加わった。

 マリアは神剣を壊してしまったエピソードを神父に正直に話したが、意外なことにあっさり許してもらえた。しかも、神父はどこか嬉しそうだった。


「その柄に刻印されている文様なのですが、私達の祖国、イスラエルの国璽こくじに――」

「酷似してるわネ」

 エリは言葉遊びが好きなようだ。


「柄は立派だけド、肝心の刀身が無いネ」

 エリがごもっともな感想を口にする。


「あれはマリアが・・・」

 口にして、しまったと身構えるメシヤ。

「何よ、あたしのせいだって言うの!?」

「・・・マリアが守護まもってくれたお蔭で、僕たちも大事には至らなかったよ」


「べっ、別に私は何もしてないわよ。怪しいやつが来ないか見張ってはいたけどね」

 セリフの前半は照れていたが、後半はメシヤにあてこすった。


「しっかし、この有様じゃさすがに使いものにならないかなー。ダニエルさんなら何か知ってそうだけど」

 メシヤがつぶやくと、ダニエルという人名にレマが反応した。


「お姉さま、GIAも動き出した模様ですね」

 レマがエリにひそひそ声で話す。

「まア、ここは特別な土地柄だからネ」

 エリは達観したような目でそう言い放った。






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