表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/216

疾きこと風のごとく

 二年の桐嶋は中学時代、陸上部でスプリンターだった。高校からサッカーを始めたのだが、100メートルをなんと10秒1で走る。


「用意はいいかメシヤ」

「いつでもどうぞ」

「よし」

 部員たちが見守る中、北伊勢高校サッカー部で一番速い男を決する戦いが始まる。


 大空はパントキックで高く蹴り上げた。

 メシヤ・桐嶋が一斉に走り出す。


 桐嶋が一歩二歩と前へ出た。それもそのはず。桐嶋は100メートル10秒1。メシヤは11秒0。物理的に当たり前の現象が起きただけであった。

 普段は顔に出さない桐嶋も、口の左側をつり上げ笑った。


「なんだ、口だけかよ。藤原」

「だっせ~」

 部員たちは軽口をたたいた。しかし、メシヤが両腕を広げると、加速度に背中を押され、ぐんぐんその差が縮まっていった。余裕の表情だった桐嶋も顔に動揺が走った。


(馬鹿野郎! ボール追っかけてる時の俺はなあ、ウサイン・ボルトよか速えんだ!)

 メシヤは気分が乗ると少々口が悪くなるようだ。

 またたく間に桐嶋を追い抜き、反対側ペナルティエリアに到達していたボールにメシヤは追いついた。


「そんな・・・俺が・・・」

 ショックを隠せない桐嶋。蹴球界、いや、陸上界にも同じ歳では敵がいなかった男が、である。


「いいものを見せてもらったぞ。桐嶋、メシヤ」

 大空が二人にねぎらいの言葉をかける。


「メシヤよ、どこであんな走り方を学んだんだ?」

「子供の頃にやってた忍者ハッタリくんですよ。忍者はああやって走るみたいですね」

「漫画も馬鹿にはできないな。さしずめメシヤのあれは忍者走りだな」

「桐嶋さんも忍者走りをすればたぶん僕より速くなりますよ」

 敗者にも気遣いを見せるメシヤ。


「ははは、俺も真似してみるよ」

「ただ、ボールを持っていない時の走法ですね、あれは。ドリブルの時は切り返しもありますから、手の動きは固定できません」

「ああ、そうだな。またお前のアイデアを聞かせてくれよ、藤原」

「はい、喜んで!」


 メシヤはもともと色んな発想が湧いてくるタイプではあったのだが、聖剣と聖杯を手に入れてからというもの、その頻度が増してきた。そして周りを巻き込んでいく。まがうかたなき、インフルエンサーであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ