節電の少女に なりたい
「いつも夢に見てたくらいなんだけどさ、この異常な暑さはなんとかならないかしら?」
"梅雨の物語がはじまるよ"と口ずさむ暇もなく、多雨なシーズンは終わりを告げた。
「参りましたわ、本当に。頭が少しくらっとします」
砂漠の谷からやって来たイスラエルの姉妹にも、日本の暑さは堪える。
「工事現場では空調服が浸透しているが、まあ気休め程度だな」
暑さ対策は急務である。
「メシヤ~、なんとかならないかナ~?」
汗はほとんどかかないエリが、懇願している。
「ハンディ扇風機ってブームになったけど、ミスト付きのほうが絶対涼しいよね。たださ、なぜか分からないんだけど、外国メーカーばっかりで、大手国産メーカーのものが無いんだよ」
クーラーより扇風機の方が当然消費電力は低い。排熱の点でも、扇風機はすぐれた夏の家電である。
「それなんだよな。据え置き型のリビング用でも、ミスト付きが見当たらない」
イエスの仕事なら、外仕事用に大きめのミスト付き扇風機が欲しいところだろう。
リビング用で無いのは、カビが心配されるためである。
「ふ~ん、どうしてなんだろうね? 簡単に作れそうな気がするけど」
冬より暑い季節が好きな夏女のマリアだが、さすがに限℃を超えている。
「この程度ならわざわざオブライエンさんを煩わせるわけにもいかないし、手工野さんに当たってみるよ」
有名家電メーカーに勤めていた手工野なら、期待が持てそうだ。
メシヤがハンディタイプのミスト付き扇風機を参考に、さらさらとスケッチを描きあげた。
「よし、これで送信。と」
重要な連絡は、FAXを使うようにしているメシヤ。これは、手工野も同じ考えである。
三日後。東海地方のブロック新聞に、レオンが目を通している。メシヤのイラストを清書したであろう家電の告知が、小さく掲載されていた。