神様は、サウスポー
「村上宗隆選手、打ちまくってるよね」
熱狂的ドラゴンズファンのメシヤが、肩を落とした。
「ああ。完敗だな」
ワンサイドゲームに、イエスの表情も浮かない。
「だけどさ、ヤクルトって日本一になる前は最下位だったわよね。こんなスカッとした逆転劇もそうそうないわ」
御存じの通り、オリックスもパリーグを制した前年は、最下位であった。
「村神なんて呼ぶファンもいるようですわ」
イスラエル代表も、野球は強い。
「村上選手のデータを見てるとサ、低めが打てないのは誰でもそうだけド、ベルトの高さの外角が一番打率が低いネ」
エリも野球好きである。
「俺は前から思っていたんだが、左のサイドスローが増えると、プロ野球はもっと面白くなるぞ」
左サイドスローなら、強打者・村上の背中から来たボールが、逃げるように外角へスライドしていく。
「それ面白そうだね。左のサイドスローって、練習すればけっこう簡単にマスターできるよ」
メシヤは両利きである。
ところで、イップスに悩まされる野球選手は、思いのほか多い。改善方法として、利き手の逆で何日か投げてみるというものがある。これは仮説であるが、自分が潜在的左利きと気付かぬまま、右で打ったり投げたりしている選手がいるように思う。そうした選手がイップスになりやすいのだとしたら、辻褄は合いそうだ。
「あんた、遊びでよくやってるわよね」
マリアがゴムボールをサイドスローで投げると、メシヤの左手にストライクで収まった。
「ハハハ! 名古屋人は豪勢だネ!」
エリがテレビを見て、白い歯をのぞかせている。
「名古屋人は金ピカ好きだと聞いていましたが、ここまでとは・・・」
金色のランドセルに金色の器、金色のタクシーまで走っている。身に付けるグッズもゴールドを好む。
「名古屋と言ったら金シャチだからな」
イエスの本宅も、キンキラキンである。
「そうだ! ドラゴンズのユニフォーム、本拠地ではブルーとゴールド、ビジターではブルーとシルバーをあしらうと良いんじゃないかな?」
これは勝率が上がりそうだ。
「エルドラド(黄金郷)は、NAGOYAだったのね」