大器晩成
「めし屋フジワラの料理が美味しいのはもちろんだけド、器がこれまたいいよネ」
東海地方は、焼き物の町が多い。
「料理や季節に合わせてお皿を細かく変えていますわ」
ここまで考えるのは面倒なので、普通は敬遠される。
「よくお店でじっと見てるもんね、あんた」
どちらかというと、陶器より磁器が好みのマリア。
「メシヤは自分で器を作りにいったりしてるくらいだからな」
メシヤの器は計り知れない。
「だって、楽しくない? 食事の時間が芸術鑑賞にもなるしさ」
工夫の感じられる形状の器が、増えている。
「うわっ、なにこれ!」
マリアがオーダーしたウッフ・アン・ムーレットが、陶器では珍しい花柄をあしらった皿に載せられ運ばれてきた。フレンチにぴったりである。
「メシヤさま、またお腕を上げられましたね」
レマは小さく両の手を叩いた。
「磁器でそういう絵付けは見掛けるけド、これは綺麗だネ!」
食べ終えてから、エリも賞賛を送った。
「ほう。どこで見つけたんだ?」
イエスも興味を持った。
「瀬戸市だよ。さすがというかなんというか、陶磁器全般をせとものって言うくらいだからね」
「これもいいわね」
マリアがめざとくカウンターの焼き物を見つけた。
「スフィンクス? 日本の焼き物でこんな青釉のは見たことないネ!」
ペルシアンブルーがひときわ異彩を放っていた。
「個人の料理店は小物ひとつとっても、大将の趣味やセンスを感じられるな」