表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/213

パパからもらったラーミネート

「とっても大事にしてたのに、壊れて見えないメニューがあるんだ」

 演出上、メシヤの父親は出番が無い。父親の作成したメニュー表が、だいぶ傷んでいる。


「メニュー表ってすぐ油でベタベタになるわよね。かと言って拭いてもあんまり綺麗にならないし」

 これはどうしたものだろうか。


「それならマメにラミネートしたほうがいいな」

 めし屋フジワラでは、タブレット注文を採用していない。


「ラミネーター、あると便利ですわ」

 裁紅谷姉妹は、2029年の未来からやってきた、サイボーグのような戦闘力である。


「紙切れだけだと無くすシ、すぐボロボロになっちゃうからネ」

 メニュー表を眺めてご満悦の、天使のような軍神の笑顔。


「それで言うと、ラミネートしてある診察券のほうが長持ちよね。むかしながらの、予約日時を直接書き込むようなタイプには使えないけど」

 マリアのような健康優良児でも、掛かり付けの医者があるのだろうか。


「そうそう。けっこう用途が広いんだよ、ラミネートは。大きいサイズになると、自分でつくった方が安上がりだし」

 店に売っているラミネーターなら、A3サイズまでつくれるモノがある。A2なら、A3をふたつ繋げてつくる。


「小さいお子様がいたりペットを飼われているご家庭ですと、大切な書類を破損してしまうことがありますものね」

 大人でもコーヒーをこぼすことが考えられる。


「きょうはメキシコのサンド、セミタ・ポブラナを作ったよ。仔牛のカツレツだから、エリとレマも食べられるはず」

 めし屋フジワラは毎日食べられるメニューが変わるので、ラミネートしたメニュー表は、基本的な料理だけを載せてある。


「ワ! ただのハンバーガーより断然こっちのほうが美味しいヨ!」

 肉を揚げた時点で、勝負は決まっていた。


「こんな重厚なバーガーは、なかなか見られねーぜ」

 まだ早い時間だが、夕食もいらなくなるくらいのボリュームだ。


「日本に来て、体重が増えないか心配ですわ」

 右手を頬に当ててうっとりするレマ。


「こういう日替わりのメニューは、ボードに書いた方が手っ取り早いわね」

 マリアの傍らには、フィッシュアンドチップスも添えてあった。


「美味しい料理を食べさせてもらったシ、ワタシも一曲披露しようかナ♪」

 どこから持ってきたのか、エリがクラリネットを吹く体勢に入った。


 小さいからだと大きいクラリネットが不釣り合いだったが、その場の空気が一変した。遠くイスラエルの情景を思わせる調べだった。


「あれ?」 

 途中から曲が崩れだした。


「エリ、なんか音が飛んでない?」

 メシヤが異変に気付いた。


「“ラ”の音が出なイ!」







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ