表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/213

爪に火を灯すように

「メシヤは深爪だネ!」

 エリは人の細部をよく観察している。


「うん。ちょっとでも伸びてると、引っかかって折れちゃうんだよね」

 ちょこまか手作業をする人ならではの発言である。


「イエスさまも同じですわ」

 レマは視線を十九川財閥の御曹司に向けた。


「ああ。メシヤと同じ理由だな。爪なんて簡単に持ってかれてしまうからな」

 難点は、めくる作業をする時だろうか。


「手の爪はいいんだけど」

 マリアの爪はやや伸びている。


「足の爪って切りにくいわよね」

 マリアが言い終わると、エリとレマがマリアのお腹を見た。


「違うわよ! お腹がつっかえて切れないんじゃないわ!」

 割れてはいないが、マリアの腹筋は見事である。


「関孫六の爪切りを僕も使ってるけど、足はまた別ので切ってるよ」

 臥龍剣・鳳雛剣は、鍛冶町の関市で造られた。


「うむ。一般的な爪切りは手の爪を切りやすいようにカーブが掛かっているが、それだと足の爪は切りにくくなるんだよな」

 イエスは自分の爪に目をやり、握りしめた。


 メシヤはマリアに足用の爪切りを手渡した。『ハラッパーの真ん中で』は、このシチュエーションが非常に多い。


「へえ、良さそうじゃない!」

マリアは靴下を脱ぐと、早速爪切りに取りかかった。

もう少し、女性としての恥じらいを持って欲しいものだ。


「マリア、親指が大きいネ!」

足の親指が大きいのは、霊感が強い証であるという。


「そうかしら? こんなものだと思うけど」

マリアは刃を入れた。手用と違って、刃が斜めに一直線になっている。


「どうですか? マリアさま」

レマの爪は、小さくて赤ちゃんのようである。


「うんうん、これいいわね! メシヤ、ちょっとのあいだこれ貸してよね!」

ジャイアニズムの発動である。


「いいけど、可愛いデザインのもあるから、マリアも買うといいよ」

メシヤが目のやり場に困りながらつぶやく。


マリアは幼少のころ、年の離れた兄に爪を切ってもらっていたことを思い出した。

マリアの少し荒れた手は、人知れぬクロウがあったことを、感じさせた。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ