表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/219

マックレイカーズ

「ねえ、コーラー」

 オブライエンは、自ら設計したラボにいた。


「お待たせ、ジェニー」

 コーラーは、ふじ・王林・世界一を掛け合わせた、りんごの”さしゃ”を皿に盛った。


「あら、気が利くのね」

 伝説の剣を象ったピックで、オブライエンはさしゃをかじった。リンゴが赤くなると、医者は青森をうとむ。


 ジェニーの研究風景は、周囲の思惑とはずいぶん様相を異にする。意図的にネット環境を遮断しないと、広大な世界が矮小化されてしまう。


「ジェニーの考えていることは、なんとなく分かるよ」

 リンゴのことではない。世界を駆け巡っている一連のニュースについて、ジェニーが無関心でいるはずがなかった。


「私はね、政治的イデオロギーを持ち合わせていないつもりなのだけれど、オネーギンのことを思うと、ね」

 フォローレンスを脱獄したオネーギンだが、まだジェニーは再会できていない。


「P国があんな事になってはね」

 コーラーは腕を組み、人差し指で2回叩いた。


「フェイクニュースという言葉が盛んに聞かれるけれど、市井しせいの人があらゆるメディアをチェックしようとも、ザイオンの息の掛かっていないところは、もはやどこにも存在しないわ。無論、ネット上もね」

 真実情報を発信したところで、たちまち反対勢力にかき消される。


「でもね、ジェニー。ここに来て世界情勢がとたんに動き出した気がするんだけど、やはりあの少年のせいなのかい?」

 コーラーは腕組をほどいた。


「コーラー。信じてもらえないかもしれないけど、映画や小説と違って、そうしたフィクサーはごくごく普通の人達なのよ。彼を厄介者扱いするだけなら、とっくに消してるはずだわ」

 地球を機能させるには、矛盾したものを同時に存在させなければならない。


「ヘブル文書には、この結末が書かれているんだよね?」

 どこにも所属しないコーラーだが、不埒者の流れ弾で死んでしまうのはまっぴら御免だと思っている。


「ええ。ただ人類は、エデンからは、まだ出られないわ」

 さしゃが、燃えるような赤光しゃっこうを放っていた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ