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歌経標式

「ムッシュ、メシヤくんの文章を読んでいるとすぐ気付きますが、彼はとてもオーソドックスな歌病かびょうですね」

 メシヤは意図してなのか、同音の言葉を避けようとする。


「以前彼がチラッと話していましたね。同じ漢字がひとつのページにいくつも出て来るのが、むずがゆいと」

 紋切り言葉を繰り返し聞かされるのは、案外ストレスである。


さといメシヤくんのこと、分かっているはずだわ。話の内容云々よりも、どの音を一文に配置するかということのほうが、よっぽど人の気持ちを左右させるんだってことをね」

 言葉とは、本来そういうものである。


「彼が音楽狂なのも、関係あるでしょうね。良き話し手は、優れたDJと似ています。次にどんな話や曲が飛び出すか分からないですし、まさにここしかないというタイミングで、適した音を繰り出します」


「わたしもその傾向があるのだけれど、さすがにメシヤくんほどではないわ。職業柄、論理ジャンプを許されないことがかせとなっているとはいえ」

 ジェニーの実務能力の高さは、この辺りからもうかがえる。


「メシヤくんはこうしたことをトレーニングとしてではなく、知的遊戯としか捉えていないように感じますね。カラダを動かして遊んでいる内に、多くのことを学んでいくとでも言うような」

 メシヤの飽きっぽい性格が幸いしているが、常に知らないことを探そうとする欲求を、彼は持っている。TVだろうとネットであろうと、ネタの鮮度が高いのは聞いたことも無いような話である。ゆえに、広まってしまった後にしつこく話してはいけない。


「ごくごく普通の人には見えていない風景が、彼には見えているのよね。わたしは褒め言葉として使うけれど、メシヤくんはパレイドリアであり、アポフェニアなのは言うまでもないわ」

 ランダムな宇宙の海原に、法則性を見つけ抽出してしまう。


「メシヤくんの思考癖やすぐさま行動に移すところは、学ぶべきところが多いです。逆説的ですが、現代人に漠然とした悩みが増えているのは、頭ばかりを使っているせいで頭の働きが鈍っているから、と言えますね。頭はカラダの一部分ですから、カラダを使わないと当然頭の働きも衰えます」

 お金を払ってカラダを使うレッスンを受けるよりも、カラダを動かしてお金をもらったほうが、よっぽどSDGsではないだろうか。








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