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禁断の果実

「たいしたもんねー」

 マリアがめし屋フジワラの吊り棚テレビを見て感嘆する。


「お兄ちゃんと一緒の年には見えないね!」

 マナが湯呑の韃靼だったんそば茶を配りながら生意気を言う。


「ボウスハイトくんはモノが違うよ。男の僕から見てもカッコいいって思うし」

 メシヤはメインの料理は出し終えて、いまはデザートの果物をいている。


 店外には、マリアが飼い始めた犬が座っていた。あるゲリラ豪雨の夜、北伊勢教会へ迷い込んだのだ。クーバース犬のようではあるが、犬種はよく分からない。捨てられた犬だろうか。毛並みはよく、上品さを感じさせる犬だった。

 食堂の中へ入れる訳にはいかないので外に出しているが、メシヤもマナも大の犬好きなので、マリアが連れてくるのは大歓迎だった。マリアはこの賢そうな犬に「エル」と名付けた。


「漫画みたいな設定の男があらわれたネ」

 エリは来日する前から、日本の少年漫画フリークである。


「それならメシヤさまも負けていませんわ」

 レマはボウスハイトよりメシヤの肩を持つ。


「メシヤ、お前も張り合えよ。こういうの好きだろ?」

 イエスがけしかける。


「あー、ダメダメ、イエスくん! こいつはすぐ調子に乗るんだから!」

 マリアがとんでもないといった手振りで止めに入る。


「まあ、僕がいま考えてるのは、日本もこれで大変革を迫られるんじゃないかなってことだよ。ボウスハイトくんみたいな天才があらわれたら、退屈しないと思うよ」

 メシヤが言い終えると、フルーツの盛り合わせをテーブルへと運んだ。


「日本の果物はみずみずしくて美味しいネ!」

 エリはご満悦だ。


「イエスさま、さっきからあまり手をつけていらっしゃいませんね」

 レマが気づいて声を掛ける。


「ああ」

 イエスはビジネス誌『東海経済』に目を通しながら、空返事をする。


「イエスさんは果物が基本的に駄目なんです。リンゴ以外は」

 マナが眉尻をさげて教える。


「イエス! 好き嫌いよくないヨ!」

 その発言を口にする資格があるのか疑わしいエリが釘を刺す。


「すまんな。なぜかリンゴしか口に合わないんだ」

 それが関係あるのかは不明だが、イエスはアップル信者でもある。


「最近、若者の果物離れって言われてますね」

 レマがニュースの記事を披露したが、イエスは果物の皮を剥くのが面倒くさいという理由ではないようだ。


 メシヤは、リンゴ・いちご・バナナなどの、犬に食べさせてもよい果物を選んで、エルのところへ持っていった。


 エルは美味しそうにそれらを食べ始め、メシヤに感謝するように噛み締めた。

 メシヤがエルになにか話しかけているようだ。

「エル、知ってるか。十九川は、リンゴしか食べない」







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