表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/217

ダビデのひこばえ

 藤原ヨシヤ(メシヤの父)の車に、天ぷら米油が積んであった。メシヤはそれを持ってきてもらうようにエリに頼んだ。


 駐車場は小高い丘にあり、その端から見下ろす形で調理場があった。低い崖の下にメシヤたちがいるような位置関係だ。


 小柄なエリには少々天ぷら油の一斗缶が重かったのか、不安定にヨロヨロしだした。嫌な予感がする。


 メシヤはそれを知りもせず、山菜の具材に天ぷら粉をまぶしていた。エリが小崖の上から助けを求めようとしたその時―――

 

 バッシャー――ン

 

 一斗缶の油がぶちまけられて、メシヤは頭から浴びてしまった。メシヤは何事かと驚いたが、米油は思いのほか嫌な感じはせず、全身で美味しく味わえた。

 

「油、そそがれし者・・・」

 レマが真摯な表情でその台詞を口にした。ユダヤ人は救世主を待望しているが、救世主マシアッハとは、油そそがれし者という意味である。

 



「メシヤ、川で洗ってきたほうがいいぞ」

 イエスが哀れみの声を掛ける。


「ああ、そうだね。このまま天ぷらを揚げたら、僕が火だるまになっちゃうよ」

 調理を中断し、川に向かおうとするメシヤ。


「メシヤ、ごめン・・・」

 申し訳なさそうに眼をウルウルさせるエリ。


「手伝おうとして起きた事だし、全然気にすること無いよ、エリ。それに米油って直接舐めても美味いんだって分かって新発見だったよ」

 米油がポマード代わりになって、普段は前髪をおろしているメシヤがオールバックになっている。


「ありがとウ! 前髪をあげてるメシヤもカッコいいネ!」

 エリは自分の感情を正直に表現するようだ。


 あらあらといった表情のマリアから、タオルを渡された。エリはメシヤと一緒に川べりまで付いて行った。


 女の子の前でパンツ姿になる訳にもいかず、ズボンはそのままで上半身のシャツを脱いだ。メシヤの裸を見て、エリは驚嘆した。それは、ミケランジェロのダビデ像のような肉体美だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ