交通工学
「真っ赤なポルシェだなんて、昭和歌謡だね」
メシヤがマリアの車の助手席に座っている。
「乗るときだけ数時間借りるレンタルだから金額は知れてるのよ。高校生割引もあるし」
マリアはメカドック・真倉でポルシェに出逢った。
「おーい!」
一旦停止を停まらず突っ切ったマリアを、メシヤがとがめた。
「あんたがバックシートドライバーだったとはね」
反省の色を見せないマリア。
「当たり前じゃん! いま右から車が来てたら死んでたよ!」
マリアの運転技術は抜群だが、こうした交通ルールを軽視するのはいただけない。
「それは悪かったわね」
ふてくされるマリア。
「でもさ、見通しの悪い交差点ってなんとかならないものかしら」
「確かにね。日本の道路事情はまだまだ良くないと思うよ。交通事故が多いスポットってあるけど、初めて通るドライバーが判断しにくい場所だったりするから」
建設ラッシュの北伊勢エリアであるが、古い道路は手つかずのままのところもある。
《マリア、300m先を左折です》
ナビのアスラーダが指示した。
「OK、アスラーダ!」
「このナビも考え物だよね。みんな同じルートを辿らせるから、渋滞になるのも当然じゃないかな」
「あんた、いまだに紙の地図を眺めてるもんね」
「もちろんナビも使うんだけどさ。なんか変な道通ってるぞって気付いても、まったく知らない道だったらナビに従うしか無いよね。でも事前に見当ついてたら、ナビを無視して最適なルートをたどることも出来る」
「一理あるわね」
マリアがアクセルを踏み込んだ。
「その目的地にたどり着くのに、ルートが一つしか無いってのは改善しないといけないよね」
「迂回できる道が何通りもないと渋滞の元よね。ナビ通り走ってると迂回の道も知らないままってのもあるけど」
「一番思うのが、道路拡幅工事をしてほしいってことかな。対向車を待ってる時とか、右折レーンが無いところで後ろに渋滞が出来てる時とかに感じるなあ」
「そうなのよね。田舎道でもそういう交通量が多いところは重点的に拡幅してほしいわ」