【短編】拝啓 婚約者様、そんなに妹君が好きならばお二人でどうぞ *連載版はじめました
今日、カルバリェスの長女として生まれた私は小さな頃から婚約をしているファーリス・ファルケンハウゼン伯爵との初めてのデートを予定していた。
都市部から遠く離れた領地を持つカルバリェス家と都市部で代々王宮の裁判所の長を務めるファルケンハウゼン家ではこうして会うことですら一大事なのだ。
私は馬車を1日近く走らせて、昨日の夜に都市部に到着。デートの前日にホテルをとって準備までした。この日のために仕立てた夕日色のドレスに最高級のブローチ。靴だって特注品だ。
「ミラ・カルバリェス様でございますか」
待ち合わせ場所で私に声をかけてきたのはファーリス様ではなく、ファルケンハウゼンの使者だった。
「えぇ、あなたは?」
「申し遅れました。わたくし、ファルケンハウゼン家に仕えておりますミルホックと申します」
ミルホックはまだニキビが残るほど若い青年で元気よく私に最敬礼をした。
「ミルホック、私になんのようかしら。ファーリス様は?」
「それが……ファーリス様の妹君、デイジー様とのお約束ができてしまったとのことで本日は来られないと。伝言に参りました」
私は頭が真っ白になる。
ファーリス様とお会いするのは数ヶ月ぶり、以前は王宮での舞踏会でほとんど会話をすることはできなかった。ファーリス様は王宮のさまざまな方々との人脈を作るために私をほとんどお飾りにして1日中挨拶回り。2人で楽しめる時間なんてほとんどなかった。そもそも婚約をしてから家族ぐるみでお食事会をしたり、パーティーや舞踏会に行くことはあっても2人きりでデートというのはしたことがなかった。まだ私たちが学生の身だったこともあって両親たちが2人きりは避けていたのもあると思う。
将来を約束された婚約者であっても、婚前交渉なんてもってのほか。その身は清らかでいないといけない。私とファーリス様はそんな美しい関係性なのだ。
20歳を迎え、結婚が間近になってやっと、お忙しい彼がやっとデートに応じてくれたと思ったら……。
「それはどういうこと?」
「こちらを……」
ミルホックは胸の内ポケットから便箋を取り出すとわざわざひざまずいて私に寄越した。私は急いで便箋を開く。
==== ====
拝啓、いとしのミラへ
ミラ、すまない。
僕の妹であるデイジーの誕生日が近いんだ。君とのデートの準備をしていたら「お兄様とバカンスに行きたい」とごねられてしまってね。
こうなってしまうとデイジーは絶対に譲らない子なんだ。
君はいずれデイジーの姉となる存在。それに君が男爵令嬢である今は君の方が身分が低い。
つまり、僕は年下で身分の高い彼女を優先することにした。
デートはいずれまた僕の方から声をかけるよ。
追伸
デイジーの誕生日が近いんだ
君からも何か贈り物をしてほしい
ファーリス・ファルケンハウゼン
==== ====
婚約者である私とのデートを断って、妹君とのバカンスに出かけた。
そんな事実は私の中にあった彼への気持ちを崩壊させるのに十分だった。彼の妹のデイジー・フォン・ファルケンハウゼンは幼い子供ではない。
デイジーは私と彼の3歳年下の18歳。もう立派な大人の女性で誕生日を兄にねだってまで祝ってもらうような歳ではないのだ。
「ミルホック、ご苦労だったわ。ありがとう、ファーリスにはミラは帰ったと伝えてくれるかしら」
「かしこまりました」
私はその日のうちに馬車に乗り、辺境にある自宅へと戻った。
***
私は家に帰ったすぐに、部屋に戻るとファーリスからの手紙を箱の中から引っ張り出すと片っ端から読み漁った。
ずっとおかしいと思っていたのよ。ファーリスは妹想いの優しいお方だと思っていたけれど、さすがに昨日の行動は常軌を逸している。もしも、私が身内から同じようなことを同じ立場でねだられたら……
「私だったら婚約者も一緒に連れていくわ」
そう。
どうせ家族になるのなら婚約者を置き去りになんかせずに一緒にバカンスへどうかと誘ってくれればよかったのだ。
『妹のデイジーに新しい洋服を買ってあげたんだ』
『デイジーが犬をほしがってね』
『デイジーと君が姉妹になるのが待ち遠しいよ』
手紙を読めば読むほど、彼と妹の関係がより親密なことに気がついた。妹が起こしに来てくれただの、結婚した後も妹と一緒に暮らしたいだの……。
「ねぇ、おかしいと思わない?」
私が問いかけたのは、学友で兄の婚約者として我が家に滞在しているハルネだ。ハルネは伯爵家の3女でうちのお兄様とは恋愛結婚。こんな辺境の地に来てでも兄と結婚したいと言ってくれた女神様である。
「おかしいわ。そもそも、婚約者とのデートより毎日顔を合わせている妹を優先するなんてどうかしてる。これって、マックスが私よりミラを優先するってことでしょ?」
「そう、そもそも私は兄のデートを邪魔したりしないわ。兄のことは尊敬しているけど一緒にバカンスに行きたいとは思わない」
私も妹の立場だからデイジーとファーリスの関係が深すぎることに違和感を抱いていた。
「うげ〜、毎日起こしにくるですって。私、ミラがマックスにこんなにベタベタしていたら嫌だわ。なんか、ゾッとする」
「そうよね。私も想像したくないわ。前は妹想いの素敵な人だと思っていたけれどそうじゃないのかも」
「これは、妹の方も意図的ね」
ハルネがクッキーをつまんだ。
「なんだか結婚するのが億劫になってきたわ」
それから数ヶ月、私とファーリスはいつも通り文通でやりとりをしていた。彼は相変わらず私への愛の言葉よりもデイジーの自慢話が多くて私はほとんど読まずに箱の中にしまっていた。
とはいえ、幼い頃からの約束だしこの婚約を無下にするわけにもいかない。まさか、妹君が大好きすぎるからなんていう理由で格上の貴族との婚約をなしにしたらお父様もお母様もきっと悲しむだろう。
「明日はファーリス様もいらっしゃる舞踏会。もちろん、妹のデイジーも」
「あら、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫。デイジーにも婚約者はいるんだしファーリス様は別に意地悪ってわけじゃないのだから」
「私もいるから何かあったら声をかけてよ」
「ありがとうハルネ」
「えぇ、あなたこそ私の大切な妹になるんだから。私を頼ってね」
***
舞踏会には多くの貴族や王族の血を引く方々まで集まっていた。私はもちろん婚約者であるファーリス様の隣で笑顔を振りまいている。
「おや、ファーリス様。彼女が噂の?」
「はい、僕の婚約者ミラです」
「ごきげんよう」
「とっても素敵なお嬢さんだ」
こんな会話をいろんな人と続けている。この国の男たちはまるで自分のアクセサリーのように妻や婚約者を褒めてもらって喜んでいる。可笑しな話だわ。
「お兄ちゃん!」
キンキンする声と共に私とファーリス様の間に割って入ったのは真っ赤なドレスを着た童顔の女の子だった。
「デイジー、危ないだろ」
「だって、お兄ちゃんと離れてしまってさみしかったんですもの」
「デイジー、君には婚約者のデモンズ公爵がいらっしゃるだろう?」
「いるけど……まだ婚約者だもん。今はお兄ちゃんがいい。ねぇ、あっちに美味しそうなラザニアがあったの。食べにいかない?」
「ちょ、ちょっと」
私に背を向けるようにして話し続けるデイジーとそれに夢中なファーリス様に声をかける。
「ミラ、悪いね。デイジーが料理を食べたいらしい。少し外すから君も適当にしていてくれ」
デイジーを愛しそうに見つめるとファーリス様は「こっちだ」と彼女をエスコートする。
「あっ、ちょっと待ってお兄ちゃん。ミラさんのドレスがワインで汚れてしまってるわ」
デイジーは胸元からハンカチを取り出すとわざとらしく私に近づいてくる。私の胸元に溢れたワインを拭くフリをしながら
「お兄ちゃんは私に夢中なのよ。あなたにはあげない。せいぜいお飾りの奥さんでいてね」
と呟いた。
あまりに突然のことで私は言い返せず、彼女が笑顔を振りまきながらファーリス様のもとへ帰っていくのを見守ることしかできなかった。
「おや、お一人かな」
しばらく呆然としていた私に声をかけてきた男性は小綺麗な装いにすらっと背の高いブロンドが特徴的な紳士だった。
「ミラ・カルバリェスと申します」
「こちらはアレックス・ラベルゴだ。こちら、どうぞ」
ラベルゴと言えばかなり有名な公爵家で衛生騎士の長を勤めていると聞いたことがある。国内の病院の経営者のほとんどがこのラベルゴ家の出身だとか。
「カルバリェスといえば、君はもしかしてファーリスの?」
「婚約者をご存知で?」
「あぁ学友だよ。寄宿学校ではルームメイトでね」
アレックスのハンカチで胸元を拭いて、私はソファーに腰掛けた。
「さっきのあれ、見ていたがひどいもんだな。あいつの妹好きは有名な話だが……婚約者を置いて抜け出すとは」
「抜け出す?」
「あぁ、2人でワインを持って抜け出していったよ。そもそも、軽食にラザニアなんて食いにくいもんは出てない」
「お話し中すみません、ミラ様」
私とアレックスの会話に大急ぎで入ってきたのはミルホックだった。あぁ、嫌な予感がするわ。
「ファーリス様より伝言です」
「あぁ……」
「ミラ。デイジーが足を挫いてしまってね。彼女を家まで送らないといけないから今日はここで解散とさせてくれ。申し訳ない。デイジーは今日のために新しい靴を下ろしたんだがそれが合わなかったようだ。悪いが今日はこのまま僕も一緒に帰ることにするよ、とのことです」
ミルホックは嫌な役回りを受けたようだ。申し訳なさそうにこちらを見て私の返事を待つ。
「ミルホックご苦労様。お大事にと伝えて頂戴」
ミルホックが足速に去っていくと、彼とすれ違うようにガクンと項垂れた黒髪の男がこちらへ向かってくる。知らない男だが彼はアレックスを見つけるとパッと笑顔になってこちらに手を振った。
「やぁ、アレックス。そちらは?」
「ミラ・カルバリェス男爵令嬢。ファーリスの婚約者の」
「あぁ、あなたが。じゃあ、もしかして今の伝令って……」
「えっと、あなたは?」
私は黒髪の男に言った。
「申し遅れてすまない。僕はカルロス・デモンズだ。えっと、ついさっき僕もデイジーからの伝言を受けてね」
なるほど……、この感じを見るにカルロスもアレックスもファーリス様のご学友だろう。
「なぁ、さすがにあの兄妹おかしくないか?」
アレックスがそう言うとカルロスもうんうんと頷いた。そして2人は私の方を見ると
「ミラ、君は何か知らないかい?」
と同時に言った。
「こんなこと……なら」
私は今までの文通のやりとりや初デートをデイジーに邪魔されたことなどを彼らに話した。話せば話すほどやっぱりあの2人はおかしかったんだと実感する。
——あの2人の距離感は異常だ。
「あぁ、よかった。ミラ。ファーリスさんが帰ったって聞いて私探したのよ」
「ミラ、こちらの公爵様たちと何か?」
やってきた兄とハルネに私たちは事情を話した。
ファーリスの学友である公爵2人も兄とハルネに今まであったことを洗いざらい。
「ミラ。婚約を破棄したっていいんだ。こんな屈辱を受けてまで家のために生きることはない」
兄のその一言で私の心にフッと幕が降りたような気がした。私は、あんな家に嫁ぎたくなんかない!
「デモンズ公爵……」
「カルロスでいい」
「カルロス、あなたの婚約者デイジーも傷つけることになるわ」
「あぁ、僕もこの場で屈辱を受けたんだ。あの2人にはそれ相応の報いを受けてもらわないと」
カルロスがニヤリと笑う。
「じゃあ、妹への愛を語ったラブレターを明日僕の家に送ってくれるかな?」
アレックスがそう言うとカルロスの肩にぽんと手を置いた。
「実は、医師である僕がこの舞踏会に参加したのはデイジーに会うためだったんだ。そして、確信した」
「何を?」
「それは、そうだな。近日開かれるデモンズ家の結婚披露宴でのお楽しみと行こうか。そうだ、ミラ君も参加するといい。僕が招待状を出しておくから」
ここでハルネが口を挟む。
「どうして義妹となるデイジーの結婚披露宴にミラが呼ばれていないの?」
確かに、その通りだ。そんな話私は聞いていなかった。
「決まってるじゃないか、花嫁側の拒否だよ。兄は丸呑みしたようだ」
あの女狐……。
「というわけで君は僕の友人として急遽参加してもらうよ。日程は1週間後、デモンズ家の教会だ。ラベルゴ家の人間が前日に迎えにいくから楽しみにしておいてくれ。とっておきのものを見せてあげよう」
***1週間後***
デモンズ公爵家の教会に私はやってきていた。私がいることにたいそう驚いたファーリスが私を無理やり廊下の端っこに追いやると
「妹が嫌がるから帰ってくれ」
と凄んでくる。
「どうして? 私とデイジーは義理の姉妹になるのよ?」
と反論してみる。
私はもうファーリスに何を言われても悲しくもなんともなかった。お父様もお母様も真実を知って憤慨なさっていたし。ただ、アレックスに「今日の結婚披露宴が終わるまでは婚約破棄を通達しないでくれ」と頼まれていたのでそうしなかっただけだから。
もうこの男に気持ちはないのだから。
「デイジーは君の身分や立ち振る舞いを心配しているんだ。それに、デイジーの美しさに嫉妬するんじゃないかって」
もう呆れるくらいのお馬鹿さんだったのね、あなたは
「おや、ファーリス。どうしたんだい?」
声をかけてきたのはアレックスだった。
「いや、その……」
ファーリスとアレックスは学友とはいえ公爵であるアレックスの方が格上だ。
「ミラは僕とカルロスが招いたんだ。この前の舞踏会で意気投合してね。君の婚約者さんだったなんて、席は離れてしまっているが怒らないでくれよ。さ、披露宴が始まる。2人とも行こう」
アレックスはファーリスに気が付かれないように私にウインクをした。助かった、これで追い出されずに済むわ。
教会の中へ入ると豪華に飾り付けられた舞台の上に真っ白なドレス姿のデイジーと笑顔を振りまくカルロスがいた。
披露宴は問題なく進行し、サーカス団の出し物やオペラ歌手の歌、美味しい食事に私たちは素直に楽しんだ。
そして、披露宴の最後。新郎の友人スピーチだ。
壇上に上がったのはアレックスだった。
「カルロスとは幼い頃から学友として切磋琢磨してきた好敵手です。不器用でちょっとおバカなカルロスがこんなに綺麗なお嫁さんをもらうこと嬉しく思います」
アレックスのスピーチに会場が拍手を送る。彼はそれっぽい言葉を並べ、スピーチを盛り上げていく。
「そして、医師の僕が一つここでご報告をします」
アレックスは注目があつまるまでしっかりと間をおくと
「デイジーのお腹の中にいる子供が無事に生まれてくることを祈っています」
「どういうことだ!」
ここでカルロスが大声を上げる。そしてそのままアレックスの胸ぐらを掴んで叫び散らす。
「俺はつい1週間前までずっと軍隊の遠征に出ていたんだ! 彼女の腹に子供などいるはずがない!」
アレックスはカルロスを振り払うと
「いいえ、僕は医師です。デイジーのお腹にはそうだな。2ヶ月になる子供がいるはずだ。なぜなら僕の家の系列病院に彼女が受診していたからだ」
アレックスは胸ポケットから診断書のようなものを取り出してカルロスに見せる。
カルロスはわざとらしく驚くと「相手は誰だ!」と怒鳴り散らした。
アレックスは会場を見渡すと私の方を向いて手を挙げた。
「ミラ・カルバリェスさん、こちらに来てくれるかな」
(あら、そういうことね)
私は颯爽とステージに向かうとアレックスの隣に立った。会場はざわついていたものの被害者はデモンズ公爵。この場を止めようとするものはファルケンハウゼン家くらいしかいないが伯爵である彼らは強く意見を言えずにいるようだった。
「彼女がデイジーの腹の中にある赤ん坊の父親が誰かを証明してくれます」
アレックスは私に見覚えのある便箋を渡してきた。
「これは、2ヶ月前。私が婚約者であるファーリス様から受け取った便箋です。
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拝啓、いとしのミラへ
ミラ、すまない。
僕の妹であるデイジーの誕生日が近いんだ。君とのデートの準備をしていたら「お兄様とバカンスに行きたい」とごねられてしまってね。
こうなってしまうとデイジーは絶対に譲らない子なんだ。
君はいずれデイジーの姉となる存在。それに君が男爵令嬢である今は君の方が身分が低い。
つまり、僕は年下で身分の高い彼女を優先することにした。
デートはいずれまた僕の方から声をかけるよ。
追伸
デイジーの誕生日が近いんだ
君からも何か贈り物をしてほしい
ファーリス・ファルケンハウゼン
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私が読み終えると会場はより一層ザワザワとうるさくなった。
それもそのはず、近親同士で肉体関係をもつことはこの国では禁止されている。しかも、それを隠して格上の貴族に嫁入りしようとしていたのであれば大問題である。
「そう、このようにデイジーは2ヶ月前に彼女の兄であるファーリスとバカンスに行っていたのです。婚約者であるミラさんを置き去りにして……」
私はカルロスとアレックスの演技に乗るように涙を流し、話を続ける。
「彼は、婚約者である私への手紙の中でも以下のように妹君デイジーへの愛を語っていました」
私はアレックスから渡された数々の愛の手紙を読み上げる。ファーリスの方を見ると顔を真っ青にして呆然としていた。デイジーの方は狂乱して暴れ、デモンズ家の使用人たちに取り押さえられていた。
「デイジー。君との婚約もファルケンハウゼン家への援助の話もなかったことにさせてもらうよ。それからファーリス、僕の婚約者に手を出したこと強く抗議しよう。近親での肉体関係は禁じられているはず。裁判所の長を務めるファルケンハウゼン家の信頼も揺らぐだろうな。公爵家であるデモンズ家は王宮でこのことを報告しファルケンハウゼン家の爵位を取り上げることも検討させてもらう」
カルロスは「デイジー、君もしっかり償ってもらうよ」と言い放つと会場を後にした。私も彼のあとを追うようにして歩く。
「ミラ! 待ってくれ!」
ファーリスが私の手を掴んだ。
「ファーリス様。こちらの婚約についてはお手紙にて今後のことをお伝えさせていただきますわ」
ファーリスが何か叫んでいるのが聞こえたが私は無視して会場をあとにした。
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拝啓、ファーリス様
ごきげんよう
この度の騒動を受けて、私ミラ・カルバリェスはあなたとの婚約を破棄させていただきます。
かねてより、貴方は妹君のことを大好きだとおっしゃっていましたね。
そんなに好いているのならお二人でどうぞお幸せに。
ミラ・カルバリェス
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私の手紙が届いて、婚約破棄が正式に決まってから数ヶ月後。
ファルケンハウゼン家は裁判所の仕事から追放され伯爵だった爵位も返上することになった。デイジーはうちよりもさらに辺境の地の修道女院へ出家。
ファーリスは激戦区である戦地に歩兵として出兵することになったとか。
「ミラ! アレックスさんがお見えよ!」
ハルネの声がして私が庭の方を見るとこちらに向かって手を振っているアレックスがいた。
「あら、ごきげんよう」
「この辺にもうちの系列の病院があってね。寄ってみたんだ。よかったら少し散歩でもいかがかな? ミラさん」
アレックスはにっこりと微笑むと私にひざまずいて手の甲にキスをした。
おわり
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