忘れていた初恋の巻
初めまして。初瀬 琴音と申します。
徒然なるままに、小説を書き始めてみました。
壱分は如何でたか?
いよいよ弐部が始まりました。まだ、全て書き終わっていないので、投稿間隔が空いてしまうかもしれませんが、よろしくお付き合い下さい。
ブックマークしていただけると嬉しいです。
(久しぶりに帰ってきたけど、やっぱり我が家は最高!)
アンティアは、侍女が起こしにくるまでの一時、天蓋付ベッドで足をバタバタしながら、実家を満喫する。
春前にはタウンハウスに移動しないといけない。
魔導師団の見習い、という話になってはいるが、毎日のように行われるお茶会、夜会……などの社交になるのだろうか?
頭が痛いわぁ…と思いつつ、枕に顔を埋める。
起こしにきた侍女に、義父上に話があるので、予定を聞いてほしい。と伝える。
タウンハウスに行く前に、寄っておきたい所があるので、義父上に許可をもらいに行きたい。
そこは、滝砦と呼ばれていて国境に接している。
平常時は自然豊かな穏やか別荘地となるが、有事の際には防衛の最前線になる砦だ。
幼い頃に過ごした土地で、ここで式の扱いを精霊使いに教えてもらった。
精霊使い。と言う呼び名が正しいのかもわからないが……
※
しばらく帰ってこないのだから、挨拶ぐらいしておいた方が良いだろう。
と、義両親は賛成してくれた。
翌日、アンティアは、セオとモモと数人の護衛と共に滝砦に向かう。途中、伝令砦で領地の事務を片付けながら、数日かけて滝砦に着いた。
モモ達が片付けをしている間に、アンティアは、砦の監視塔に登った。
眼下にはラベンダーが一面に広がっている。事故の時に、アンティアが、握りしめていたラベンダーの花束を差し穂して増やしたのだ。
まだ、時期ではないので一面、茶色なんだか緑なんだかの微妙な色合いだ。
(今年は、一面の紫を見れないんだなぁ……) アンティアは少し寂しく感じるのだった。
砦での自室に入る。少しホコリっぽい匂いがするのも懐かしい。
一回りする。(あー、帰ってきたんだな……)
壁に、幼い頃のアンティア、カイ、セオ、モモの4人の姿絵が飾られている。
ふと、気になってその姿絵を凝視する。
(私の瞳って、こんな色だったっけ?)
その絵のアンティアの瞳は、辺縁がアメシストで、中心にかけて琥珀色だった。
そんな事もあるのか…と思いつつ、ふと視線を下げると、壁に小さな隙間を見つけた。
(あっ、子供の頃、宝物をしまってた場所だ)
こんな昔の事、なんで今さら思い出したんだろうか。
まぁ、忘れる位だから、もうなにも隠してないんだろうけど……と思いつつ、そっと隙間を開けてみる。
フフッと声が漏れる。
そこには、綺麗なエメラルド色の石が置いてあった。
アンティアは、そっと隙間を閉じた。
※
翌日アンティアは、セオとモモを連れて滝へと向かう。
滝砦から馬で1時間程で、歩いてもいける。
子供の頃は、よく走っていた。
滝の近くの岩場で二人を待たせて、独り滝壺へ向かった。とても神聖な気持ちになる。
しばらくすると、懐かしい声がアンティアを呼んだ。
※
「まだまだ!準備が遅いぞ!」
「ほらほら、足元が弱い!」
久しぶりの再開を喜ぶ間もなく、師匠の鍛練が始まる。
アンティアの目下の悩みは、連続で式を操れないこと、複数の式を一度に出せない。
精神力は肉体力に比例する。という理論の元、修行をつけてもらっている。
汗を拭う暇もないまま、師匠からの式が飛ぶ。
(いったい何体出てきんだ?)
「お前は、考える時間が長い。呼吸するように式を扱え。式を信じろ。悩むな」
(……例えが抽象的過ぎて、わけわかんない)
「それだ。そこが、カンガエスギなんだよ」
師匠のカラスが頭をつつく。
無意識に手を払うと、アンティアの小鳥の式がカラスに襲いかかる。
(あー、なんとなくわかったかも)
師匠がニヤリと笑う。
「実戦が一番手っ取り早い」
※
数日、アンティアは、修行をつけてもらい、かろうじて二体の式を同時に飛ばせるようになった。
三体になると、どうにも考えてしまって上手くいかない。
しかし、結局のところ、彼女の扱う式は『折紙』を基本にしているので、準備をしていないと飛ばすことができない。
また、接近戦になれば、式は弱いし役に立たない。どうしたものか?と悩んでいると、
「まぁ、手がないわけではないだが、今のお前では無理だな」
と、言いながら一枚の紙を取り出した。
「まぁ、見てなさい」
と、紙に何やらつぶやくと『鳥』になり、空へ飛び立った。呆気に取られていると、『鳥になれ』と『呪をかけた』そうだ。
『折紙』は、折りながら『呪』を掛けているようなもので、その『折る』行為を省いたものが、『式神』だと理解すれば良い。古来、式神は一部隊になる程の力を持つ。とも言われていた。と、教えてくれた。
「どちらにしろ、鍛練をする時間が必要だ。まずは、複数の式を飛ばせるようにしなさい」
残念だが、今は時間がない。アンティアは、今は式二体をうまくあつかえるように精進することにした。
アンティアは、師匠と再開の約束をして、精神を鍛えよう!と心に決めた。やり方は、わからないけど。
いかがでしたでしょうか?
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今日も、良い一日になりますように。