貴族の役目……の巻
初めまして。初瀬 琴音と申します。
徒然なるままに、小説を書き始めてみました。
壱分は如何でたか?
いよいよ弐部が始まりました。まだ、全て書き終わっていないので、投稿間隔が空いてしまうかもしれませんが、よろしくお付き合い下さい。
ブックマークしていただけると嬉しいです。
結局、目の前を走ってる人を押し倒したり、脚を引っかけたり、邪魔できる限りの妨害をお互い仕合っていたので、誰が勝ちなのか訳が解らない状態で、4人並んでラベンダー畑に寝転ぶ。
「アンティア、お疲れだったな、たまには王都もいいだろ」
故王弟妃のラベンダー、『ティフォリア』を一本手折り、クルクル回しながら聞いてきた。
(良いわけないじゃん……)と、アンティアはカイを軽く睨む。
カイは、ラバンディータ特有の紫、鮮やかな紫の瞳を細めながら、続ける。
「そこで、父上からの提案だ」
皆が、ムクッと起き上がるカイに注目する。
「僕もアンティアもそうだけど、セオも婚約者が決まっていない。ラバンディータに居たままでは我侯爵家は廃れてしまう。なので、貴族の役目を果たせ。と」
『はぁー!?』
アンティア、セオが慌てて起き上がる。声が揃った。
「……貴族の役目とは……?」
セオが、湖の底の様な深いエメラルドの瞳を細める。
ニヤリと笑うカイが言う。
「世襲だ」
「イヤイヤ待って下さいよ!俺、関係なくない?」
「よーく思い出せ。ロマリン卿」
グヌヌヌ……
と、セオが声にならない声をあげた。
「まぁ、僕としてはアンティアと婚姻を結んでもいいけど兄妹だし、セオとアンティアだと平民になるだろ?良く考えてみろ。こんな危険分子、世の中に放り出せないだろ?これも貴族の役目だ」
義兄は続ける。
身内が近隣貴族と縁続きになれば、領地領民も安泰だろ?戦の無い世の中が良いじゃないか。
「こんな事なら、アンティアはロマリン侯爵の養女になれば良かったな。そしたら、僕と婚姻を結んでめでたしめでたし。だったのにな」
カイがチラリとセオを見る
「それか、爵位を頂けるような何かを成し遂げないとな」
顔を真っ赤にしたセオは、何処とでもなく走り出す。
「あまり虐めないで下さいよ」
呆気に取られているアンティアを横目に、モモが言う。
「まぁ、続きがあるんだ」
カイは、座り直してアンティア達を見た。
「実は…」
カイが言うには、自分宛に令嬢からのお見合い話は以前からあったが、アンティア宛の話も増えてきたため、まとめて対応しちゃえ。と短絡的に思いついたらしい。
それに、王立騎士団にも興味あるしね。とウィンクをする。
「そうだ、アンティア。前から言ってた魔導師団に見習い魔導師として入団できるぞ。魔術の勉強も出来るし、交換条件を出しておいた」
「モモは王族の侍女見習いな、将来は王城勤めも夢じゃないぞ」
「義兄様、私、魔術はできません!」
「言ってたじゃないか、式を極めたいって。王城の導師団なんだから、式に詳しい魔導師位いるんじゃないか?それに、簡単な防護魔術はできるだろ?」
「という訳で、いったん家に帰った後、春前にはタウンハウスに行きます!」
パチン!と、手をうってカイは、女神も惚れそうな笑顔で立ち上がった。
※
一人走り出したセオは、赤茶けた崖の上で眼下に広がる広大な溪谷を見つめ、膝を抱えている。
数年前の『あの日』と変わらない景色だ。
セオは、まだ小さく兄の手を握りしめていた。
目の前の光景に声も出なかった。
セオの両親は驚きの表情を浮かべ、隣にはラバンディータ侯爵夫妻とカイ。
深くドーナツ円上にえぐれた地面の真ん中に、ラベンダーの花束を握りしめて泣きじゃくる女の子。
回りには、全身黒づくめ人達が倒れていて、近くには壊れた馬車が落ちていた。
セオが一番理解できなかったのは、女の子の回りを何か白い人形の様なものが取り巻いていることだ。
まるで、彼女を守っているように。
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今日も、良い一日になりますように。