家へ帰ろう。の巻
初めまして。初瀬 琴音と申します。
徒然なるままに、小説を書き始めてみました。
壱部は、これにて終了となります。
続話は、随時確認後に投稿していきたいと思ってます。
ブクマをお願い致します。
爆発で起きた砂煙が、舞台の演出のようにだんだんと消えていって、膝まつき、手と手を取り合った王太子とお嬢様が……浮かび上がってきた……ように見えた。
アンティアは、握っていた氷のナイフを落としてしまった。セオを含め皆、呆然と二人を見ている。
(いやぁ、見ているこっちが恥ずかしいわ。これで、王太子の婚約者は決定したって事でいいわよね)
さて、どうにかこうにか『王太子妃候補のご令嬢誘拐事件』も、無事解決したので、アンティア達辺境伯一同は帰路へつくのでありました……
とはいかず、身分がばれてしまったアンティア達は、王城へ戻ることとなり、舞踏会に、もれなく出席させられる事となるのでした。
モモが大慌てで、舞踏会の準備をしてくれた。セオの衣装もあるので、大騒ぎだった。
アンティアのドレスは、鷹用のアームカバーが、うまくドレスのデザインに溶け込むよう工夫されていて、ラベンダー色のレースをたっぷり使用している。
王都のデザイナーが、頑張ってくれた。
もちろん、脛にはナイフを仕込んでいる。これは絶対必要。
セオは、領地での正式な軍服に身を包んでいる。
我が領土のカラーが紫を主体としているので、二人ともラベンダー色が中心の衣装だ。
「ラバンディータ侯爵令嬢」アナウンスが流れる。
セオにエスコートされながら、アンティアが入場する。いつも義兄様にお願いする事が多いので、少しテレる。
人々の視線が肌に突き刺さる。義父の為にも堂々とした態度で中央を歩く。
セオの顔を盗み見ながら『顔は…良いわよね…』
と、独り言を言ってみる。
真夏の太陽の様な、煌めくゴールドの髪に林の中にポツンと佇む湖のような、深いエメラルドの瞳。
北国特有の透き通るような肌に、鍛えられた長身の体躯…剣の柄に手を掛けた物憂げな様子がまたいいわ…悔しいけど。
「お嬢様も、黙っていればそれなりですよ」
こいつ、否定しない。
しばらく歓談が続き、セオもアンティアも、人々に囲まれる。
なんだかんだ理由をつけては、デビュタント以降、あまり表舞台に参加しなかったので、物珍しいのだと思う。
トランペットが鳴り、陛下からのお話が始まる。
「王太子の婚約者を発表する、イークサロニー
伯爵令嬢」
かわいらしいピンクの髪色の一人の令嬢が前に進み出る、やっぱり救出大作戦の彼女だ。
一斉に拍手が巻き起こる。
ハチミツ色の甘い金髪に王家特有のゴールドの瞳の金色づくしの王太子と手を取り合い、微笑みを交わす。
絵に描いたような幸せな二人ですこと。
(あー、これで帰れる。良かった)
ホッと一息つきながら、拍手をしているアンティアの頭を、セオがポンポンとなでる。
「さぁ、お嬢。帰りましょう。」
セオの手の温かさに安堵しながら、頷く。
家へ帰ろう。
※
「セオ、モモ。万が一王太子妃候補に残るような事があれば、アンティアを隣国に逃がせ。アレの秘密を王家に知られてはいけない。」
セオとモモに密命が下っていたのは、また別の機会に……
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