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魔術だらけの世の中で、式神使いはどうでしょう? 式だって魔術だい!  作者: 雪 琴羽
~とりあえず、王太子妃候補から逃げましょう~
3/21

港町で、美味しいものを食べたい!の巻

磯の香りが鼻をくすぐる。もうすぐ港町に着くようだ。日もだいぶ傾き、海が見えれば沈んでいく夕日が見えただろう。

アンティアは、真っ暗になる前に宿を決めたいと、考えながら、馬の瀬に揺られていると、遠くからアンティアを、呼ぶ声が聞こえた。


「お嬢ぉー遅いですよー」


一本道の先の方で、腕をブンブン振ってるデカイ男が見える。

領地にいるはずのセオだった。(おいおい、仕事はどうした?)



~遡る事、数日前~


「聞いてないですよ!お嬢が見合いだなんて!」

セオは大声をあげる。


このラバンディータでは、他に比べて主従の関係が近い方だが、辺境伯令嬢の婚姻に、一騎士が口を挟むなんてあり得ない。

セオ自身も、十分に理解しているはずなのだが、どうにも、気持ちを整理できないようだ。


アンティアとセオとカイの三人は、子供の頃から一緒に野山を駆けずり回り、魔法や護身術、武道を競いあってきた仲だ。

だからなのか、セオはアンティアを妹の様に思っている……はずだ。

その、妹と思っているアンティアの一大事に、こんな辺境でのんびり帰りを待っていられるか!

ということらしい。


「途中の宿場町で護衛を待機させようとおもっていたんだが、セオ行くか?」

「行くに決まってるじゃないですか!」

ラバンディータ辺境伯の問いに、セオは頭が外れる勢いで頷く。


王都からラバンディータまでは、途中2ヶ所宿場町がある。港町か湖のほとりか、だ。

セオは港町で出迎える事にした。なぜって、『お嬢は単細胞だから』と考えたからだ。


セオが、港町の定宿で待っていると、アンティアのイブキが窓辺に止まった。脚輪からメモを取り出すと、帰る、と書かれてあった。

セオのエメラルドの瞳が優しく揺れる。

手紙を戻して、イブキを離す。気を付けて帰れよ。と声をかけて。


セオは、(さて、お嬢を迎えに行かないと)と独り言をいいつつ、いそいそと準備を始めた。



「カイ様と掛けたんですよ。何日で王都から逃げ出すか。そして、何処に寄り道するか。俺の勝ちですね。」

セオは、得意気にアンティアに、言ってくる。

(逃げ出すのを予想してたなんて……『社会勉強だよ?』は、どうした?)


セオは続ける。

「ローレルからの船が入港するらしいんで、珍しいナイフも出回ると思ったんですよ。なんで、俺は港町に掛けました。」

「義兄様は、何処に掛けたの?」

「湖ですよ。新種のラベンダーが出来たらしくて。ですが、お嬢は花よりナイフでしょ?いい加減、妹に…」

アンティアは、言い終わる前に、セオの頭を叩いてやった。失礼なヤツだ。


ヤイヤイ言いながら、セオが取ってくれてた宿屋に入る。

アンティアは、軽く湯あみをしてから、ラベンダー色のワンピースに着替えた。

アンティアは、何故か昔からラベンダー色が好きだ。


二人とも、お腹が良い具合に空いてきたので、匂いを頼りに食事処を探す。(やっぱり、魚介でしょ)


二人は、目当てのお店を見つけて席を確保する。

アンティアは、一応警戒しておこうと、人目を気にしつつ、ポケットから梟の型紙を取り出し、息を吹き掛ける。

手のひらサイズの梟は、窓辺へトコトコ歩いていき、外へ出た。

彼女が感覚を共有すると、どうやら屋根の上に乗っているようだ。


「お嬢、人前で術は使わない約束ですよ?」

すかさずセオが、周りに認識障害を掛けていたようだ。

アンティアが、「ごめん」と謝ると、頭をポンポンしてくれる。

思わずセオを見て、ニッコリ微笑む。


食事も終えて、そろそろ宿に戻ろうかと話していたときに、何か聞こえた気がした。

セオに聞いてみるがわからないとのこと。


アンティアが、梟に意識を集中してみると、どうやら、路地裏が騒がしいようだ。

見て見ぬふりも後味が悪いので、セオと二人で、通りがかった振りで様子を確認しようと路地裏に向かった。

すると、どこからどう見ても怪しい人物達が、路地裏には似つかわしくない女性を、木箱にしか見えない箱に押し込んでいる。

(木箱に入れるか?普通)


セオとアンティアは、顔を見合せ

『行くしかないよね?』

『行くしかないでしょ。』


とは言ったものの、二人で、どうやって助けようか思案しつつ後をつけていると、いつのまにやら岩場の洞窟にたどり着いていた。


(意外と隙が見つからなかった。ただの悪党じゃないのかしら?)


洞窟の入り口から目を凝らしてみるが、奥の様子はいまいちわからない。ただ、話し声らしきものだけ聞こえる。

話し声が、だんだん近づいてくる。悪党共が出てきた。さて、困った。

出入りの人数は合っているから、木箱を置いて出てきたのは推測できるけど、中に仲間がいないとは限らない。


アンティアは考える。梟も付いてきてるけど、洞窟に梟がいるか?怪しいよねぇ…洞窟にいても怪しまれない動物…コウモリ?コウモリってどんな形?


『ねぇ、ネズミに羽つけたらコウモリ?』

『見た目はそんな感じでしょうけど、ゲテモノになりませんか?』


(私の術は、基本折り紙なんです! コウモリなんて折ったことない)


アンティアが、うんうん悩んでるうちに、なんだか足元が濡れてきた。(波が高くなった…?)


『お嬢!潮が満ちてきてます!戻れなくなりますって!早くコウモリでもゲテモノでも…』

セオが、慌てる。

『あーっ!もういいや!出たとこ勝負で行きますよ!お嬢!』


セオが、暗闇に走り込んだ!

(おいおい、二人で行けるのか?私、お嬢様なんですけど!)と、心の中で叫びつつ、アンティアは慌てて、セオの後を追った。

いかがでしたでしょうか?

面白かった、つまらなかった。評価、いいね、☆等で応援していただければ、幸いです。

今日も、良い一日になりますように。

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