魔術も少しは使えますぅ。いざ、王城脱出!の巻
「そりゃ、警備に穴があったら問題ですよ。王城ですよ?」
呆れ顔のモモに、着替えを手伝ってもらう。
「じゃあ、港町に行ってみようかしら?何か面白いものが見つかるといいなぁ。」
隣国の船が入っているなら、変わったナイフが見つかるかもしれない。と、アンティアは考えた。
「もう、ナイフはいりませんよ。」
モモに、しかめっつらで釘を刺された。
「いやいや、ナイフは芸術よ?細かい細工とか惚れ惚れするわ。手のひらに、しっくり収まった日にはもう、買うしかないでしよ?」
「しっくりナイフが、何本あると思ってるんですか!そんなに、持ち歩けないでしょ。」
モモは、文句を言いながらも、ツル草が複雑に絡まったような彫りが、柄に施された、美しい刃文のナイフを、脛に仕込んだ革ホルダーに、閉まってくれる。
これは、アンティアの、お気に入りの一本だ。モモは、アンティアに甘い。
乗馬服に着替え終わったアンティアは、椅子に座り、テーブルの上にある、ラベンダーの型押がついたメモに、サラサラと一言書いて、バルコニーに立ち指笛を吹く。
しばらく待つと、『グゥァァァァ』と言う鳴き声と共に、鷹のイブキが視界に入ってきた。
アンティアが、アームカバーのついた左腕を、胸の前に出すと、スッとイブキが、舞い降りる。
モモが、先程のメモを折って、イブキの脚輪の中に閉まった。
再び、アンティアが、腕を振り上げると、イブキは、大空に飛び立った。
※
義父上、義兄上
お役目は果たしたと思うので、港町で散策してから帰ります。
※
この手紙を付けたイブキは、途中で休憩しても、日暮頃には、領地に届けてくれるだろう。
(よし、呼び出しが来る前に逃げよう)
アンティアは、ワンピースと、必要な生活費などといっしょに、軽食も入ったバックを持って、再びバルコニーに立つ。
モモに見守られながら、精神統一。
「どう?」
「大丈夫です。しっかり隠れてますよ。」
気配を消しきったアンティアは、バルコニーから身を乗りだし、手近な木に飛び移る。
「じゃ、お土産期待しててね。」
明後日の方向に「お気をつけて」と、モモが手を振る。
(うん、大丈夫。見えてない)
アンティアは、小鳥の目で、確認した情報を、思い出しながら、警備の少ないところを走り抜ける。
「うん?風が強いのか?」
警備の横を走り抜けるアンティアは、さながらつむじ風のようだ。
城内を抜け、人目の付かないところで、術を解いたアンティアは、ポケットから、馬の折紙を出し、息を吹き掛ける。
颯爽と、栗毛の馬にまたがったアンティアは、港町を目指し、馬を走らす。
(どこで軽食を食べようか…日が暮れるまえには、港町に入れると思うんだけど。数日後には、港町で領地の迎えと、合流できるはず。上手くいきますように……)
いかがでしたでしょうか?
面白かった、つまらなかった。評価、いいね、☆等で応援していただければ、幸いです。
今日も、良い一日になりますように。