忘れられた過去
初めまして。初瀬 琴音と申します。
徒然なるままに、書き連ねました。
楽しんで頂けたら幸いです。
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アンティアが、目を覚めしてから数日がたった。義母のラバンディータ侯爵婦人がベッド横で、ポツリポツリと話をしだした。
昔々、私達のアマンベール王国と忘れられた王国は友好関係を結んでいました。
国民達は、お互いの国を自由に往来していました。
ラバンディータとロマリン両国は、国境を接していたので、より活発に交流をしていました。
その為、夫妻になる領民もおり、子供も産まれました。
数世代を経て、『別々の国』という意識が薄くなった頃に事件は起きました。
アマンベール王国は魔法が主ですが、忘れられた王国は式が主です。
ラバンディータと、ロマリンは混血が多いので、式を扱える領民が少数ですが、産まれてきたのです。
その中でも、自由に式を扱える子供が産まれました。
混血児の王弟と忘れられた王族直系の娘との子供です。
アンティアは驚いて、ラバンディータ侯爵婦人の顔を見上げた。
「そう、あなたは最強の戦闘兵器なりうる存在だったの」
それを危惧した故王弟妃は、幼いあなたをつれて滝砦で、式の使い方を教えていたわ。
間違えても『最強兵器』にならないように。
そんなある年、王太子一派と、王弟一派との派閥争いが激化して、『最強戦闘兵器』である『あなた』を利用しようとするもの達が現れた。
同時期に『式使いはテイマーでもあるんじゃないか?』という説が出始めたの。
魔導師団が、領民の同意を取って、式を扱える子供達で、実験が行われたんだけど、大量の魔力が必要みたいで、身体が耐えられなくて……という事が続いて、中止になったんだけどね。
表立っては禁止されていたけど、一部の貴族が、領民の子供を誘拐する事件も起こり始めたわ。こっそり実験する為にね。
誘拐され悪用されるのを恐れた王弟殿下は、あなたに魔法をかけたの。
命の瀬戸際にだけ、自分を守る理由があるときだけ『式を自由に操れる』ように。
忘れられた王国でも、幼子の行方不明が続いて、私達は国境を閉じる決断をしたわ。
でも、それは王命に逆らうことになるから、自然災害を装ったの。
わかるかしら?自然を操れる人がいるのよ?
それで、王位継承問題と共に、『最強兵器』のあなたが狙われたの。
※
アンティアは、自分の忘れられた過去を捜しに行きたい。式を扱える理由が知りたい。と思っていたけど……なんか、すっきりしてしまった。
ラバンディータの皆に守られていたんだ。と感謝の気持ちが溢れてくる。
「鏡を見てごらんなさい」
と義母に言われて、アンティアは手鏡を渡された。
覗いてみると、瞳の中央が『琥珀色』に変化している。
(もしかして……私、最強兵器になってしまった……?)焦りが沸いてくる。
「ねぇ、アンティア、あなたはどうしたい?」
姿勢を正した、ラバンディータ侯爵婦人が聞いてくる。
鏡の中の琥珀の瞳を見つめながら、アンティアは考える。
『最強戦闘兵器』になった今なら、一人でも両親を亡き者にした者達を、殲滅出来るだろう。
でも、それでいいのか。報復がきたら私達の領民を、私個人の私怨で巻き込むことになる。
私の望みは……『平和』……
鏡の中の琥珀の瞳が、見慣れたアメシストに変わっていく。
「……!」
慌てて義母様を見ると
「理解できたかしら?あなたのお母様は『平和』を願って、あなたに式を教えていたのよ」
あぁそうか、私の力は『平和』の為に奮われるべき物なのね。守るための力なんだわ。
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