イークサロニー伯爵令嬢とのお茶会の巻
初めまして。初瀬 琴音と申します。
徒然なるままに、書き連ねました。
最終章となりました。
楽しんで頂けたら幸いです。
ブックマークしていただけると嬉しいです。
アンティア・ラバンディータ侯爵令嬢は、専属侍女のモモとイークサロニー伯爵家での、お茶会に参加するべく、街道を進んでいたのだが、なぜか今、王都を出て、木漏れ日が差し込む雑木林の石畳を、パカパカと馬車で進んでいる。
事の発端は、イークサロニー伯爵家に着くやいなやの『ピクニックに変更したい』という執事の打診だった。
馬車で、しばらく行った所の王家の森に、テラスが新設されたので、天気もいいし、如何でしょうか?という話だった。
中庭には、他家のご令嬢方もいて、皆イークサロニー家の馬車で移動してもらう。とのことだった。
不思議に思った事は思ったのだか、さぁさぁ。と急かされて馬車に乗ってしまった。
まぁ義兄様も今日の事は知っているから、怪しければ連絡があるだろうと、アンティアは思ってしまった。
どれだけ馬車に揺られただろうか、回りは木々が生い茂ってる。後悔先に立たず。とは、こういう事だろう。
「モモ、他に馬車の音してる?」
「……してないみたいです」
「もしかして、とは思っていたけど」
『はめられましたね』
顔を見合わせて、小鳥の式、二羽に息を吹き掛け用意する。瞬く間にアメシスト色の小鳥になった彼等に、馬車から出たら、義兄様とセオに異変を伝えるよう言い聞かす。
(式は話せないんだけど、まぁ頑張って伝えてください)
そうこうしているうちに、馬車が静かに止まった。
フットマンに手を引かれて、降りてみると目の前には、神秘的な景色が広がっていた。さすが、王家直轄だ。
湖の畔に小さなロッジが建っていて、湖上延びるようにテラスが設置されている。お洒落だ。
(テラスに座りながら釣りができるじゃない)
「他の方々は、まだ、いらっしゃらないんですか?」
アンティアは、何も気づいていないように装って、訪ねてみる。
「失礼が無いように、身分の高い方からお誘いさせていただいてます」
と、出迎えのイークサロニー伯爵家の侍女が答える。
(嘘つき……)
「侍女の方には、あちらを手伝って頂きたくて……」
と、フットマンがモモに声をかけ、林の奥の方へ連れていく。
アンティアとモモは、お互い視線を合わせ、頷きあう。
アンティアは、伯爵家の侍女にロッジの中に案内された……というか、部屋の中へ押しこまれた。
「はぁ?」
と、振り向くか向かないかの瞬間、後頭部に激痛が走った。思わず座り込む。
(なになになに???)
と考える間もなく、今度は胸ぐらを捕まれて持ち上げられ、左ほほを殴られた。
(いったい何が起きてるんだ?)
鉄の味が、口腔内に広がる、だんだんと怒りが沸いてきた。
回りが見えてきた。かなりの数の人間がいる。
確実にはめられてますよ。
「知ってます?ここって王家の拷問場所だったんですって」
侍女が不敵な笑みをもらす。
アンティアは口元を拭いながら、仕込ナイフを取り出した。
※
「あの、あまりお嬢様と離れなくないんですけど、一応護衛も兼ねているので」
と、モモはフットマンに冷たくいい放つ。
何の手伝いか言われないのと、ロッジから離そうとしている感じがして、不信感を顕にする。
「問題ないですよ。ここで死んでもらうので」
と、彼は言い終わるや否や、いきなり斬りかかってきた。
モモは、後方に飛び退き、ナイフを構える。
(あー、やっぱりね……)
木々の間から、黒っぽい敵が幾人か見えた。距離を取りながら、囲みを狭めてきている。
頭上の木の枝に飛び乗り、アンティアの元へ急ぎ向かう。
(カイ様、予測大当たりですよ!早くお嬢様と合流しないと……)
※
木々を飛び移りながら、斬りかかってくる敵を交わしてはいるが、ちょっとキツイな……とモモは思い始めた。
こいつら、訓練されてる……
握りしめているナイフが、血で滑る。
気合い入れて、減らしていかないと…
モモは、逃げ回るのをやめて、地面に静かに降りる。こんなに怒りが湧くのは何時ぶりだろう……
澄みきったブルーの瞳で、相手を見つめる。
「やってやろうじゃない」
身体が鈍っていないことを祈りつつ、相手に飛びかかる。
※
その頃カイは、何事もないといいけど。と思いつつ、殿下の護衛として視察に同行していた。
クワッカッカッカッ、クワッカッ
急にカイの頭上で、鳥の鳴き声がする。
肩に止まっていたシキシマが飛び立ち、一緒に旋回する。
(なんだ?あの色はアサヒ?)
いつのまにやら、肩に小鳥も止まっている、何やら耳元で囀ずっているけど……
(わかんないよっ!!)
カイは思考を放棄し、団長に別行動の許可をもらいに行く事にした。
「団長、妹に何かあったようなので一度戻ってもよろしいでしょうか?」
頭上で騒いでいるアサヒとシキシマを指さす。
王太子も騒ぎに気付き、カイに近付いてくる。
「あの鳥達って、ラバンディータの連絡手段になるんでしょ?」
「あの騒ぎ様は、尋常じゃないですね」
王太子側近のリアムも、助け船を出す。
「カイ、急いで向かいなよ」
王太子殿下の許可をもらったカイは、大急ぎで馬を走らせ、シキシマの後を追う。
とにかく、お茶会で何かしらあって緊急だ。という事だけは伝わったようだ。
『王都であいつらに何があったんだ?』
いかがでしたでしょうか?
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次話は、明日投稿予定です。
今日も、良い一日になりますように。