密談の巻
初めまして。初瀬 琴音と申します。
いよいよ弐部が始まりました。
楽しんで頂けたら幸いです。
ブックマークしていただけると嬉しいです。
第3騎士団の御前試合で、セオは初戦敗退だったらしい。それでも、騎士団での実力は認められて正式に『第3騎士団』の所属になった。
タウンハウスで過ごすようになってから1ヶ月程たった。
アンティアは嫌々ながらも、お茶会や舞踏会に参加して、ダンスを踊る相手には困らない程度にはなったが、婚姻となると……いまいち、ピンとこないようだ。
親しくなった令嬢たちと、お茶会で流行のファッションや美味しい紅茶の話、どこそこの誰が格好いい。などの話で、盛り上がる方が楽しいようだ。
また、お茶会のない日はカイ達にくっついて登城し、魔導師団で防御魔法の特訓か、図書館で本を読んで過ごしていた。
タウンハウスに家庭教師を呼んで、外国語を教えてもらう日もある。
侍女のモモは、アンティアに同行する予定がない時は、王城で侍女の仕事に励んでいる。
王都の流行をリサーチして、アンティアを立派は淑女に仕上げるために日々情報を集めている。
カイは、王太子の側近候補としての実務と第2騎士団の訓練との両立で、毎日忙しくしている。
セオも、第3騎士団での訓練や、持ち回りでの城下警備などで、カイ同様に忙しくしている。
※
そんなある日の朝、タウンハウスの談話室でカイ、モモ、セオの三人が真剣に話し合いをしている。
「イークサロニー伯爵家ですが、グレーですね。誘拐事件を画策した痕跡があります。 火薬の出所はイークサロニー伯爵領でした。うまいこと隠してますけど」
セオが、イークサロニー伯爵家についてネズミが集めた情報を報告をする。
ネズミというのは、ラバンディータ領の諜報部隊だ。
「あちらが、ラバンディータ侯爵家をはめようとしていたようです」
どこからか、アンティアが港町にいる事を聞きつけて、利用しようとしていたらしい。と、モモが報告する。
「お嬢が、事件に首を突っ込んでくれて助かりましたね。これで、あの事件の違和感もスッキリしますよ」
あちらの侍女が、『イークサロニー伯爵令嬢がアンティアに呼び出された』なんて証言しようものなら、潔白を証明するのに苦労するところだった。
王太子妃候補の争いなんて、貴族が喜ぶ噂になるところだった。
真相なんて関係ない。
ネズミによると、こちらがあの事件の真相に気づいているか気になって探っているらしい。
「イークサロニー伯爵家からの誘いを断り続けるのも、そろそろ限界だから……」
カイがモモに身体を向けて続ける。
「一度、一緒にお茶会に参加してくれ」
確実に何か仕掛けてくるだろうから、毒の対応と護身、アサヒを飛ばしておくのを忘れずに。と、モモに念を押した。
また、王弟の事故とイークサロニー伯爵家のつながりが、いまだにグレーで判別つかないので、アンティアの身の回りに、十分に気を付けるようにとも伝える。
カイは考えている。
殿下とイークサロニー伯爵令嬢との婚約が異常に早い。恋に落ちた、なんて言ってるようだが、そんな玉じゃない。
ましてや、リアムが異議を唱えないのも腑に落ちない。王弟夫妻の事故と王家の関わりも疑わしい。
あいつら、何か企んでる。王家も絡んでくると厄介だ。
それに、アンティアが社交に出るようになって、故王弟妃と同じ『深い紫の髪色』に気付き、故王弟妃の娘では?と勘ぐってくる貴族が増えた。
事故ではなかった。とするのなら、アンティアが狙われる。
「父上にも一度こちらに来てもらおうか。 ちょっと僕にも対応しきれない」
社交時期の最後の『王家主催の舞踏会』に出席してもらおうか……と、カイとセオが相談しているところに、アンティアの声がした。
「義兄様、今日王城にご一緒してもいいですか?」
アンティアが許可を得て談話室にはいると、唐突にカイが言った。
「アンティア、イークサロニー伯爵令嬢からのお茶会のお誘いあったよな?あれ、モモと行ってこい」
何度も断るのは失礼になるから、一度位、誘いに乗った方がいいし、なんと言っても未来の王太子妃だからね。と、微笑む。
もう、何処に出しても恥ずかしくない令嬢になったから、胸を張ってラバンディータ代表として行ってこい。と、アンティアに伝える。
お断りの手紙ばかりで、そろそろ断る文面も底を尽きそうだったので、丁度良かった。と思ったアンティアは (魔導師団に行く前に、お返事書いちゃおう)と思い立ち
「お返事書いて来ますので、待ってて下さい!」
と、伝え自室に急いで戻った。
カイに目配せしながらセオは騎士団へと向かい、モモはアンティアの後を追った。
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