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2 山の家族

新しい家族に私の生まれた山の暮らしや両親、友達のことを、話しています。

父は、男の子のやることを、母は、女の子のやることを教え始めた。勉強もした。字を習うときは、地面を捜して書いた。中間の木や草を避けて地面を捜して、畑を一周したこともある。父と笑いころげた。

 山では、なんでも家族だ。草も木も動物も自分の周りは、みんな家族だ。大切な友達だ。他には、「しょう、そこに泳いでいる魚は何匹だ」とか 「今の明るさは何時頃だ」と 父は都合のいい時、質問しては、僕に数を教えてくれた。

 両親は、いつも山の中にある物で教えてくれる。時々は、字をいっぱい書いた紙で、テストをさせる。何のためか知らない。時には、「しょう、頭がいいな」とか、「出来ないな」とか 言うときがあった。僕には、どっちが、どっちでも良かったけれど。父も母も、相手の教えには一切、異論を挟まなかった。

「迷惑したのは、僕だけどね」山や川で、好きなことをしていたのに、あれこれ覚えさせられたからね。それでも、兎にリス、猿やしか、鳥や蛇、かえるに魚、みんなと遊ぶのが楽しかった。

 

 十七歳になる少し前、父と母に呼ばれた。家の前に置かれたイスに三人出掛けた。父の手作だ。枯れた木を拾い、蔦で結えたイスだ。夜でした。星がきれいに輝いていた。真丸いお月様は、小さな小さな雲の上に座っていた。

 いつも二人で、何をやるにも二人なのにその時は、僕を中にして座り、星が、空一面に輝いている夜空を眺めていた。

「しょう」 声がとぎれた。 「伝えておきたい事がある」悲しさを滲ませた小声で、きっぱりと言った。父が、このような言い方をしたのは初めてなので恐れた。

 僕は、膝を抱え震えを押さえていた。父を見た。膝の上で、手をぎゅっと握り締めている。

目にうっすらと涙を浮かべている母を見た。二人はうなずき会っている。

「三日後には、父さんも、母さんも死ぬんだ。これは避けられないんだよ」 母は落ち着いて頷いていた。

「お前を一人にするのは悲しいけれど、お前のためでもあるんだ」 二人は、僕を抱きしめてくれた。僕には、何の事かわからない。

また、辛くはなかった。父も母も死ぬなんてありえないから…。病気でもない、怪我もしていない。どこも悪くない父と母だ。

 でも、少し考えてみた。僕は一人になるの。なぜなのーー。いまも元気な二人が、どうして死ぬなんていうの? 父さんは、何を話しているのだろう…。

 父は、母を抱きかかえると、家に入っていった。僕は混乱していた。その夜は、一人山を歩き回り、猿に抱かれて、木の根元に寝た。 

11章まで書きます

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