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やり込んでた乙ゲーの『悪役令嬢』になった私は、7日で〈ハッピーエンド〉を迎えたい。

作者: たぉ

連載向けの内容を短編に縮めたものなので、違和感あったらごめんなさい。

エッセイと連動した作者さん向けの内容である為、ご容赦を……



「……きて……さい…」




 んんぅ?

 まだ、朝、でしょ?

 ゆっくり、休ませてぇ?


「お…て……ださいッ!

 お嬢様っ! もう朝ですよっ!」


 もう、揺すらないで、よぉ。

 分かったから。

 もう起きるから。


「ふぁ~ぁっ、……ぁい?」


 背伸びした私の視界には知らない人と、

 一目で分かる豪華な部屋が広がっていた。


 ココ、ドコ? 私知らないんだけど?

 凄く広くてお金持ちの部屋みたいなんだけど?

 どういうこと? 私の家じゃ、……あれ?

 さっきお嬢様って言った?

 今、私にそう言ったの?


「もうっ、令嬢としての自覚が足りませんよ!?

 もう少し、いえ、もっとしっかりして下さい!」


 え? なんでそこまで怒られないといけないの?

 というか、何? 家政婦さん?

 ウチ、アパートの筈なんだけど?

 って言うか……


「令嬢? お嬢様? 私に言ってるの?」


「何言ってるんですかッ!?

 寝ぼけてないで早く着替えて下さいッ‼」


 え、えぇぇっ?

 寝ぼけてるもなにも、意味分かんないんだけど?

 というか、その手に持ってるドレス着るの?


 私が? 一般人なのに?


「ご、ごめんなさい? すぐ着ますんで」


「ど、どうされたのですかっ?

 あ、いえ、いつも通り着付けますのでっ」


 い、いつも通りぃ?

 私、そんな事いつもしてないんだけど?

 自分で着れる、と思うんだけど?


 いや、でもあのドレス、腰回りがキツそう。

 今の私のウェストじゃ……


「んうぇっ!?」


 ほ、細いっ!? 私のウェストがっ!?

 あの肉ド(肉ドーナツ)は何処行った?

 と言っても、そこまで太ってなかった筈だけど。

 というか、胸……大きくなってない?


「お嬢様?」


「え? あー、大丈夫。

 理想体型になって驚いただけだから」


「特にお変わりは無いように思いますが?

 それより早くお立ち下さい。

 予定が遅れますので」


「あ、ごめんなさい?

 えっと、お願いします?」


 予定って何だろ?

 というか、何コレ?

 夢?(ムギュ)

 うん、違うね。

 現実だコレ。痛いわ。


 それにしても家政婦さんテキパキしてるわ。

 介護資格とかでも取ってるのかしら?

 一瞬で脱がされたし、慣れてるんだろうなぁ?

 こんな人私知らないんだけどなぁ?


 そもそもなんでこんなお金持ちっぽい部屋で寝てたのかしら? 昨日? の記憶が全然無いんだけど?

 身体も理想体型になってるし、

 お嬢様とか呼ばれてるし、

 なんかおかしくない?


「お嬢様、お召し替え終わりました。

 直にカミナ様がお越しになりますのですぐに朝食を」


「は、はいっ」

(カミナ様? それって日本人? 誰なの?)


 言いながら家政婦さんは先導して私を案内してくれた。

 私は疑問に頭を捻りながら付いていく事にしたんだけど、

 部屋を出た先の廊下は異様に広かった。


 私はこんな場所知らない。

 地元にこんなトコあった記憶もない。


 ここは一体何処なの?

 何で私はこんな大層な場所でお嬢様扱いされてるの?



 ~~~~~~~~~~~~



 朝食を用意された部屋へと着いた私は絶句した。


 ここホテルじゃないわよね!?

 なんでこんなに広いのよっ!?


 そこは一流ホテルの様だった。

 机は長机一つのみだったけど。

 それにしても豪華すぎる……


「あぁ、起きたかい? ヘンディ。

 もうすぐ君の()()()がいらっしゃるよ?」


 横からティーカップを持ったおじ様が私に声を掛けてきた。

 お金持ち感溢れるダンディさだ。

 うん、私の知らない人。

 誰なの? どうして私の事……?


「ヘンディ? それに王子様?」


 私は知らないんだけど? そんな人。

 この人誰の事言ってるのかしら?

 というか、この人どこかでー、見たような?


「モブラン様、私はここで失礼致します」


「あぁ、ありがとう。

 お出迎えをよろしく頼むよ」


「はい、承知いたしております」


 あら? 家政婦さんどこかへ行くの?

 私、人見知りなんだけどなぁ?

 おじ様と2人きりは流石にキツイんだけど。 


「ホラ、早く食べてしまいなさい?」


「は、はいぃ?」


 私は言われるがままに朝食を頂いた。

 ただのパンと、スープだったけどね?

 なんか味がしなかった。

 そりゃ、知らないおじ様に見られながらだとねぇ?




 ~~~~~~~~~~~~




「やぁ、久しぶりだね? ヘンディ嬢」


「あ、はぁ? お久し、ぶり、です?」


 誰だこのイケメン様は?

 身なりから何から王子感半端ないんだけど?

 二次元のコスプレ感ヤバいんだけどね?

 似合ってる。モロ私のタイプだ。

 緊張しすぎて人見知りが出てしまうんだけど……?



 私が好きだったあのゲームの王子にそっくりだし。



「どうしたんだい? 君らしくない。

 まぁ、今の君の方が好感は持てるけどね?」


 さっきから周りの人達は何が言いたいのかしら?

 私は貴方達の事、知らないんだけど?

 なんかおかしいのよね?

 私、一体どうしたのかしら?


「ふむ? 本当にどうしたんだい?

 君なら、()()()()()()()反論の一つでも出そうなものなんだけど?

 抱き着きもしないし、熱でもあるのかい?」


 いつもの私?

 私は、


「私は初対面の方にそんな事言いませんけど?

 いつもの私ってのはいつの事なんでしょうか?

 第一、ここは何処なんですか?

 そもそも私はヘンディなんて名前じゃないし」



「は?」


「ん? ヘンディ?」

「お、お嬢様ぁっ!?」


「え?」


 なにこの空気。

 私、変なコト言ってないわよ?

 私は私、田中 花子(たなかはなこ)なんだから。

 ヘンディなんかじゃないし、お嬢様でもない。


 ただの一般人、26歳の社会人よ?

 なんか痩せたみたいだけど、誰かと間違えてない?

 だっておかしいじゃない?


 令嬢扱いなんて……


「お、お嬢様っ、こちらへッ‼

 し、少々お待ちくださいッ、カミナ様ッ‼」


「えっ!? ちょっ、ちょっとっ!?」


 家政婦さんが私の腕を引っ張って廊下を走りだした。

 ちょっと、足が、上がらないんだけど?


 歳のせい?

 いやいや、スカートが長いのッ‼

 まだ26歳なんだからね!?


 というか、なんで朝から走らされてるの? 私。


「お嬢様、はぁー、ここで、はぁーっ、お顔を、はぁーっ」


「あぁっ、はぁー、洗えば、はぁーっ、いいのねぇっ?」


 多分寝ぼけてるから顔洗ってこいって言いたいんでしょ?

 何も変わらないんだけどね?

 まぁ、いいわ。汗かいたし。


 扉の前で呼吸を整えた私は深呼吸して扉を開けた。

 案の定その部屋は洗面化粧台がある訳で、

 大きい家だからか大きい鏡がある訳で、


 すぐに気付いた。

 すぐに理解した。


「ウソ? なんで? だって私……?」


 そこにいたのは令嬢。

 田中花子の良く知る令嬢。

 現代世界ではいる筈の無い令嬢。


「このツリ目……

 この泣きボクロ……

 この見た目は……」


 この姿はあのゲームのキャラクターそのもの。

 この姿の名前はあのキャラクターと同じ。

 この姿を知る周りの人間には実は見覚えがあったんだ。


「私、悪役令嬢ヘンディ、なの?」


 私、田中花子の知っているキャラクター。

 もしこの姿があのゲームのままだったら、

 この姿の女性の結末は……




 そこに田中花子はおらず、

 鏡には悲痛な面持ちの令嬢しか写っていなかった。

 



 ~~~~~~~~~~~~




「大丈夫か? ヘンディ嬢?」 


「え、えぇ、少し寝ぼけておりましたわッ!

 お、オホッ、オホホホホッ」


 こんな感じ、だったかな?

 とりあえず確認が必要、よね?


「先ほどはお騒がせして申し訳ありませんでしたわ?

 まだ寝起きだったもので。

 ところで、()()()()()今お付きではないので?」


「ん? ヒカリ?

 あぁ、今日は役員の仕事らしくてね?

 もうすぐ卒業が控えているし、

 忙しいみたいだからね?」


「ッ!? あ、そ、そうでしたの?

 それは大変ですわねッ!? オホッ、オホホホホ」


 それって卒業式イベントって事よね?

 たしかにヒロインのヒカリは生徒会役員……

 もしゲームと同じ世界だったら、



 もう、終盤じゃないッ!?



 もう私は詰んでるんじゃ……

 いや、あのイベントがあるッ!

 まだ私は終わってないッ!

 抗ってやるわ。

 国外追放なんて実刑、回避してやるっ‼


「エンド、いや、卒業式は来月でしたっけ?」


「なに言ってるんだ、来週だろ?

 さっきヒカリの役員の話をしたじゃないか?」


「そ、そうでしたわ。

 オホホホホッ‼」


 ……7日しかない?

 大丈夫かしら?

 いや、諦めたら追放を受け入れるようなモノ、ね。

 それに私はマスターよ……


 全てのイベントを網羅したのよ?

 私のあのゲーム愛は誰にも負けないわ‼



 私のやり込みは、半端じゃないんだから




 ~~~~~~~~~~~~

 



 あれから3日経っただろうか?

 今のところは裏イベントも含めて最高ルートで好感度爆上げ中、なんだけど。


「へ、ヘンディ様、はぁ、はぁ、

 お待ち、いただけない、でしょうか? はぁ、はぁ」


「ヒカリさん? 役員の仕事でしょう?

 自身の責任は全うするものではなくて?

 私は自身の為にお手伝いさせていただいておりますが、

 足並みを揃えるつもりはありませんことよ?」


 どうした事か、私はすんなり悪役令嬢になれている。

 本当は見た目も心も綺麗なのは知っているんだけどね?

 今のヒカリちゃんは、私の敵なのよ。

 アナタを蹴落とさなければ私の人生に関わるのよ。


「そう、ですね。はぁ、はぁ。

 ヘンディ様のおっしゃる事は正しいです。はぁ、はぁ」


 ヒカリちゃんは病弱ですものね?

 長距離の移動は辛いでしょう……

 でも、助けたらアナタに好感度が取られてしまう。

 そう設定されてる筈だから、ね。

 

 ごめんなさい、ヒカリちゃん。


「フン、私は先に終わらせるわ。

 せめて、怪我だけはしないようになさい?」


 私が言えるのはこれが限界よ。

 だから、どうか、気を付けて?








「なぁ、ヒカリ見なかったか?」


「あ? 買い出し行ったんじゃなかったか?」


「いや、買い出しはほとんどヘンディ嬢が済ませてるが、

 あと数個足りねぇんだよ。

 ったく、ヒカリじゃ荷が重かったか?」


「そう言うなよ?

 アイツはアイツで病弱なりに頑張ってんだろ?

 今は『王子のお気に入り』だしな」


 はぁ、まだ好感度は届いてないみたいね?

 今のが『王子の使用人』だったら良かったんだけど。

 それにしても遅いわね?

 ヒカリちゃんに何かあった?

 でも、いや、もう好感度イベは終わった筈。

 助けに行っても……


「もうすぐ学生生活終わりだなー」


「ッ!?」


 そう、だった。

 もう、終わりが近いんだ。

 下手に助けない方がいい?


 でも、ヒカリちゃんは何も悪い事してないのよ?

 人として見捨てるのは……


 でも、私の人生に関わってしまうわ?

 そもそもあの子は別に何の罰も受けないのよ?

 冤罪でも何でも罰を受けるのは私だけ、なのよ?

 理不尽じゃない?


「……なに、してんのよ」(ボソっ)


 そう、理不尽。

 私は嫌いだわ、その『言葉』。

 勝手な判断で、勝手に決めつけられちゃうんですもの。

 社会人になって嫌でも押し付けられたわ。

 だったら私は……


「お、おい?

 何処行くんだ? もう暗くなってくる時間だぞ?

 ヘンディ嬢?」


「私は、私のやりたいようにするわっ!」


 私は強欲な女ね、きっと。

 あれもこれも手に入れるつもりだもの。


 大好きなキャラに気に入られたい。

 大好きなキャラと仲良くいたい。


 そのうえで、生きていたいんだ。



 悪役令嬢?

 上等だわ、全部奪い取ってやるわ!

 世界観(システム)なんてクソくらえよっ‼





 ~~~~~~~~~~~~




「なぁ、最近のヘンディ嬢、変わった、よな?」


「あ、あぁ、なんか、明るくなった?

 つーか、優しくなった?」


「綺麗、だよな?」


「それは元からじゃねぇか?」


「いや、それは、そうだけどさ、

 見た目、じゃなくて、なんつーかさー?」


「あー、分かるぜ?

 なんか心が綺麗って感じだよな?

 一体どうしちまったんだろうな?」



「その話、僕にも聞かせてもらえませんか?」



「「カ、カミナ王子ッ!?」」


「僕も最近の彼女が気になりまして、ね?」


「お、王子はヒカリが気に入って、」


「お、おいっ!?」


「いや、構いませんよ? 間違いではありませんから。

 それで……?」


「最近のヘンディ嬢は……」






 ~~~~~~~~~~~~



 ついに来たか。

 ラストイベント『王子誕生日パーティー』


 今のところの好感度は悪くない筈。

 モブの反応でおおよその状態は分かる。

 このイベントをミスらなければ大丈夫、よね?


「お嬢様、お綺麗でございます。

 これが学生最後のイベント、是非お愉しみを」


「ありがと、ネムさん」


 最後のイベント、だからね。

 気合入れなきゃ。


 私は最終決戦の場へと足を運んでいた。

 やはり見覚えのある城。

 間違いなく、シナリオ通りだわ。



「こんな緊張、いつぶりかしら、ね?」



 私の指先は震えている。

 仕方ないわ、私の今後が関わるイベントだもの。

 緊張? そうかもしれないけど、違う。

 武者震いよ。


 私は世界観(システム)を超えてみせる。

 その戦いが始まるのよ。


 拳を握り込み、決心を固め、

 私は城内へと歩き出した。








「今回は僕の誕生パーティーに参加していただきありがとうっ!」


 さすが王子だけあって規模が凄い。

 特に人混みがヤバい。

 人見知りの私には、地獄の様なんだけど?


「やぁ、来てくれたんだね?

 後で少し、話いいかな?」


「え、えぇ、もちろん」


 それがこのイベントだからね?

 2人きりになって私がプレゼントをあげるだけ。


 ここが一番好きなシーンで、

 リアルシーン見れて嬉しいんだけどね?

 状況のせいで楽しめないんだよねぇ?


 いつか脳内回想出来ればいいけど。


「じゃあ、『楽しみにしているよ』、またね?」


「え?」


 楽しみにしている、って言った?

 


 そんな『言葉』はないハズ……



 さっきの場面は、

「じゃあ、またね?」

 で終わる筈なんだけど?

 どういう事?


「……っしょ? 調子乗ってんのよあの女ッ!」


 何故だか私には鮮明に聞こえてきた。

 この場面でそういう会話は『私』だったハズなんだけど?


 なに? 何なの?

 違う。知らない。

 こんなの私知らないッ!?


「それで閉じ込めて来たの? そのヒカリってアバズレ?」


「カミナ王子に色目使ってんのよ!? マジありえないっしょ?」


 なんでッ!?

 なんでヒカリちゃんが監禁されてんのよッ!?

 なんでヒカリちゃんが『悪役令嬢ルート』に行ってんのよ!?

 そんなイベントなんてありえないわッ!?

 

 

「私頭いいからぁ、いい事思いついちゃったのぉ?」


「ん? それは?」


「王子の大事な人へ脅迫をしたって冤罪吹っ掛けて『国外追放』させちゃおうかな~って、どう?」


 それは『私』の追放ルートの逆版?

 っていうか、やっぱりそれだとヒカリちゃんが……



 国外追放に……?




 なんで? どういう事?

 何で『私』じゃないの?

 というか、私は今選ぶ立場にいる?


 ヒカリちゃんがいなくなれば……?



「ふ、ふふッ、アッハッハッハッ‼」



 バッカじゃないの!?

 選ぶなんて選択肢がありえないわッ‼

 王子イベント? 好感度? 関係ないわっ‼


「アンタ達、その子は何処にいるのッ‼」


 舐めんじゃないわよ、クソ世界観(システム)ッ‼

 『バッドエンド』は誰も求めてないのよっ‼


「言うわけないでし」

「言えって言ってるのが分からないのかしらッ!?」


 私は出来る限り睨みつけてやった。

 この顔の怖さは十分理解してるし、ね?


「お、お手洗い1階の個室……ど、どうか、この事はッ‼」


「いい。アンタ達()()なんてどうでもいいから」



 私は走った。

 こんなのって接待ゲーもいいとこだ。

 もちろん勝てなければ自分の身がどうなるか分からない。

 

 それでも、私は求める答えの為に走った。

 勝負がしたいんじゃない。

 ただ生きたい、それだけなんだけど。

 見たい世界、求める終わり方があったから。



 バンッッ‼



「ヒカリッ!?」


 彼女は泣いていた。

 その姿は全身ずぶ濡れ。

 近くには掃除用具が置かれているし、

 彼女の白だったであろうドレスは灰色がかっている。



 可哀想に……彼女は悪くないのに……

 本来ならそこにいたのは『私』の筈なのに……



 私はヒカリちゃんを抱き寄せた。

 彼女は何も悪くないんだ。

 ただ一生懸命に生きてるだけなんだ。

 私は誰よりもヒカリちゃんの事を知ってるんだ。


「ううぇ、ヘンディ、ざぁんっ、私ぃッ、私ぃッ‼」


「いいの、大丈夫だから。大丈夫だからね?」


 泣いてる彼女がどんなに穢されようと、

 魂までもが汚れない事を私は知っている。

 名前の通り。彼女は光。

 明るい彼女は人々に元気を与えてくれる存在。

 そんな彼女と私は仲良くなりたかった。



 それが私の求めた『ハッピーエンド』だから。





「それが君の求める答え、かい?」


「え? カ、カミナ王子ッ!?

 なんで、こ、ここに?」


 女子トイレ、なんだけど?

 というか、なんか、違う?

 カミナ王子っぽくない?


「君の心は思ったより綺麗だった。

 『純粋』、なんだろうね?」


「あの、それは、一体何を?」


「おめでとう、いや、

 ありがとう、かな? 花子さん?」


「な、なん、……えっ!?」




 急に視界が、真っ白に変わった。

 抱いてたはずのヒカリはいない。

 目の前にいた筈のカミナ王子もいない。


 ただ、白い世界に私はいた。



『出来れば君の世界に一緒に行きたかったけどね?』




『君の求めたハッピーエンドは君の物語だからね?』




 何を言って……





 ~~~~~~~~~~~~




「何を言ってるんですか? カミナ王子? ……あれっ?」



 気付いたら寝ていた。

 視界には白い天井が映る。

 横には……心電図モニターがある。

 身体は、よく見たら包帯だらけだ。

 

 だけど、痛みは無い。

 健康そのものなんだけど?



 普通に起き上がって周りをよく見てみる。


「んー? ここ病院?

 じゃぁ、さっきまでの記憶は?」


 今の今まで見ていた、体感していた記憶は?

 もしかして夢、だった?

 痛みとか、現実的だったんだけどなぁ?

 というか、もしかしたら、

 走馬灯でゲーム世界を妄想……


 うわぁ~、痛いわぁ。

 誰にも言えないな、コレ。



 コンッ、コンッ



「え? あ、あぁ、はい、どうぞ?」



 入ってきた人は、彼女は……

 


「おはよう、やっと起きたんだ?

 ……会いたかったよ? あの時は、ありがとう」


「え? ど、どういたしまして?」


 いつの事だろ?

 私が彼女に……?



 でもその姿は……アナタは……


「おかえり、ヘンディさん?」



 微笑む彼女は私が大好きなヒカリだった



 

 

自作のエッセイにてこの作品の制作について執筆しています。

それに伝えたい事、注意してほしい事等書かせていただいております。


興味があったら覗いてみてください。

参考になればいいですけど、ね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者視点で考えさせられる短編でした。王道のようで王道ではない悪役令嬢ものでしたね。 [気になる点] 作者視点でどうするかと考えたとき、ヒカリとの関係の掘り下げが一番大事かなと思いました。…
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