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The ability  作者: 不破陸
The ability
41/112

41.後を想う

「私がついてきたこと怒ってるのぉ?何だかずっと浮かない顔してるけど」

「ンなことあるはずねぇだろ。こんな美女と一緒にいられて」

国境沿いにある駅で出入国の処理を済ませた艶やかな黒髪の男女が言葉を交わす。

「本当ぉ?パパァ」

「実の娘にンな言葉遣いされたって嬉しかねぇよ」

甘ったるい声で聞き返したリネアにツェンが表情を変えずに告げた。

その言葉に微笑んで女が言葉を返す。

「アンタに対して女の武器が通じるなんて今更思ってないけど、嘘吐いてんのが言葉にも顔にも出すぎなの」

「何処にだよ」

顔を顰める赤眼の男にリネアが自分の眉間を人差し指で叩いて、それを返事とした。


慰霊碑が立ち並ぶ通りを二人の男が歩く。

「ここでテメェと付き合うのは気分が悪い」

「だろうな」

サングラスをかけた艶やかな黒髪の男の問いに、青髪の男が応じた。

「私が殺した者の墓標だ」

バーズの言にツェンが反発する。

「それはテメェの逃げ道か?それとも俺に逃げ道でも与えてくれてるっていうお優しいお言葉か?」

「俺達が殺した人間達の墓標だ」

前を行く子供達に眼をやりながら告げた青眼の男の言葉に、赤眼の男が静かに言葉を返す。

「人間なんざ死のうが生きようが俺には関係がなかった」

「私もそうだよ、ツェン君」

バーズの答えに苛立ったツェンが言う。

「だったらリネアを連れてくるんじゃねぇよ。テメェの権限なら止められンだろ」

「言葉が多いな。お前の権限でも止められることを何故しなかった?」

サングラスを外した赤い瞳が空気を突き破るように青眼の男を貫く。

「俺は何でここにリネアを連れてきたかって聞いてんだよ!!」

「論理的ではないな」

ツェンを見下したようにバーズが告げた。

「自主的についてきたのはリネアであり、それを止めなかったのはお前だ。自分が出来ることをせずに俺の能力に期待をしたのか?」

「それの何処が論理的だ」

歯嚙みしながら赤眼の男は先を行くエル達を見やる。

「お前に対してなら全てをなかったことにしてやることも可能だが」

その言葉にツェンが息をついて答えた。

「そいつぁ遠慮しとく」

「俺も同じ気持ちだ」

目を伏せたバーズの背中を叩くと、ツェンが大げさに笑って言う。

「俺ぁテメェと共犯だったな」

「お前には紛れを生ませたな」

首に回されそうな腕を払いのけるバーズの答えにツェンが言った。

「今更構わねぇよ」

自身の赤い瞳を見つめる青い眼の男の姿を、赤眼の男が眺める。

「そうか」

「野郎とガンつけ合っても面白くねぇんだが?」

青い眼を輝かせた男が明後日の方向を見やった。

「十分に楽しむといい」

悪魔のような笑みを浮かべたバーズが告げる。

「テメェ・・・!!」

「あらぁ、お父さん」

背を向ける青い髪の男とすれ違い、長い黒髪の女がツェンに声をかけた。

「待ちやがれ!!」

「目が合ったなら婚約を意味するのがこの国の法律だよ、ツェン君」

「ふざけ・・・!!」

にやけた顔のリネアが赤眼の男に寄って言う。

「だめ?」

「お断りだ!!」

ツェンの叫びが聞こえた栗色の髪の少女が金眼の少年の眼をちらりと覗いた。

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