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The ability  作者: 不破陸
The ability
18/112

18.幻想の花

「アンタお母さんのことを全然聞かないのねぇ?」


 道行く人間の顔を見ながら歩き続ける赤眼の男に黒髪の女が尋ねた。


「お前が元気ってことはサラも元気なんだろ。じゃあ聞くことはねぇよ」


「お母さんのこと死んだと思ってたんでしょ? 生きてるって分かったのに何でそんなに冷たくしていられるの?気にならないの?」


 美麗な顔を歪ませて問うリネアに眼を向けたツェンが答える。


「アイツが会いに来てとでも言ってンのか?」


「そうじゃないけど」


「じゃあ今会う必要はねぇな。前にも言っただろ」


 そう言って歩を速めたツェンの後ろをついていきながら、リネアが両親の言葉を思い浮かべた。


『惚れた女に会っちまったら離れたくなくなるだろ。今は世界が平和になるようにバーズと約束を交わしていてな。だから会いたくねぇんだ』


『あの人のことだから何かやる事があるんでしょう。それが終わるまでは私も戻ってきて欲しくないしね』


 任務のことを忘れ、思わず生返事を返してしまったが、先ほどの質問に肯定の意を返していたら前を歩く父親はどのような反応を示したのだろうとリネアは思う。


 その思いが思わず口に出た。


「お母さんが会いたいって言ってたって言ったら、会ってくれたの?」


 その呟きは聞こえていたが、ツェンは黙ったまま歩いていった。




「そろそろ帰ろうと思うが何かやり残したことはないか?」


 ツェンからの連絡を受けてバーズがお化け屋敷から出てきたエルとシルファにそう告げた。


「俺は……もうない……」


 青ざめた表情をした金眼の少年の答えを聞いた栗色の髪の少女が、悪戯な笑みを浮かべて言う。


「あっちにも似たようなアトラクションがあるけど、行かない?」


「一人で行けよ……俺はもういい……」


 その返事にエルの頬をつつきながらシルファが笑みを崩さずに言った。


「そうですねー。また『先生ぇー!』って叫んで抱き着かれちゃ困りますもんねー」


「ばっ、言うなよ!!!」


 青かった顔を赤くした少年が少女の口を手で押さえて言った。


「一度に入れるのは二人までということで先を歩いていたが、俺の時には何も出てこなかったな」


 ターバンを被り青い眼を光らせ続けながらアトラクションの中を先に進んでいったバーズが言う。


「そりゃ今のアンタのその眼つきじゃ……お化けも、ははっ、逆に驚いて逃げるだろ」


 笑いを堪えられなくなったエルがシルファと共に笑う。


「やはりこれは外しておくか」


 ツェンに押し付けられた被り物を取ると、青い髪を現したバーズが二人に言った。


「土産物はいいのか?」


 青い眼の男の問いかけに子供達が答える。


「あ、ちょっと欲しい」


「私も見ていきたい」


「ツェン達との待ち合わせ場所の出口付近に土産物屋がある。合流して一緒に見て回ろう」


 そう告げるとバーズが歩き出した。




「この帽子なんてどうだ!」


 栗色の髪の少女に園内用の被り物を被せた少年が言った。


「そいつぁ売り物なんだ。あんまベタベタ触んなよ」


 エルを窘める艶やかな黒髪の男が笑顔を向けてシルファに言う。


「可愛いぜ」


「鏡が欲しいです」


 そう言われたツェンが近くの棚に置いてあった鏡を少女の前に差し出す。


「良いですね」


 鏡に映った己の姿に対してではないが、シルファはそう評価を告げた。


「だとよ、お前のセンスもまんざらじゃねぇなぁ」


「まんざら?」


 意味を訊ねる少年に赤眼の男が言う。


「悪くねぇとよ」


「うん、似合ってるぜ」


 エルの言葉にシルファが微笑んだ。



 店外で黙ったまま周囲に眼を配らせているバーズにリネアが言う。


「不審者とかいうのは見つかったのかしらぁ?」


「今の所は何も」


 憎悪の塊のような男の姿を脳裏に思い浮かべながら、周囲の人間からその男の記憶がないかを探っているバーズが答えた。


「さっきも言ったけど辺りを見回すのが貴方の調査方法なのぉ?」


「そう見えるだろうが、そうだな。気がかりならばそれも含めて今夜ツェンを交えて話そう。ホテルには君の分の部屋も取ってある」


 その言葉に表情を緩ませたリネアが言う。


「それは上官も知らない情報を教えてくれるってことかしらぁ?」


「君が知りたいことになら答えよう」


 薄ら笑いを浮かべたリネアが告げた。


「楽しみにしているわぁ」

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