Scene1 三日月には赤系の背景がよく似合う
トルコへ向かう空
陽が落ちたカイロの街を飛び立ち、雲を抜けて上空へ上がるとそこは夕暮れの世界だった。
視界の下半分が夜で上半分が夕暮れの上下の境を雲が区切る。
三日月が浮かんでいてイスラムの国を旅している今の状況とリンクしていた。
トルコ国旗ほどの赤さではないけれど、朱色の空に浮かぶ三日月は今でも印象に残っている。トルコに限らずイスラム圏の国旗にはよく三日月が用いられる。そして地色は赤が多いような気がする。
朱色、茜色、杏色などの橙の仲間の色の雲上の空の色。
群青色、瑠璃色、縹色などの藍の仲間の色の雲下の空の色。
空飛ぶ絨毯のような厚みのない乳白色の雲。
その雲と平行に飛び続ける私が乗る飛行機。
しばらくその光景を見惚れていたが、機内食を食べ、窓の外が暗くなっているのに気づく。
あたりはすでに濃紺の帳が降りていた。三日月も見えなくなっていた。
まもなくイスタンブールに到着すると機内アナウンスが流れる。
イスラム圏を旅したときの奇跡のような空だった。
【描写した場所】
カイロからイスタンブールへ向かう空にて
☆イメージカラー:緋色
エピソードごとにイメージした色の背景色にしています。